著者
柿原 知 佐々木 愼 寺井 恵美 渡辺 俊之
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.34, no.8, pp.1457-1461, 2014-12-31 (Released:2015-04-02)
参考文献数
14

症例は65歳,男性。間欠的な腹痛と発熱を認め,腹痛が徐々に増悪したため当院救急搬送された。来院時の血液生化学検査で白血球とCRPが上昇しており,腹部造影CT検査でS状結腸に50mm長の緩やかに弯曲する細径の高輝度領域と腸管外ガスを認めた。魚骨によるS状結腸穿孔を疑い,緊急手術を施行した。術中所見ではS状結腸腸間膜側から魚骨が突出しており,後腹膜も一部損傷していた。S状結腸部分切除とS状結腸にて人工肛門造設術(ハルトマン手術)を施行した。摘出した魚骨の長さは57mmであった。誤嚥された異物のほとんどは自然排泄されるため,消化管穿孔や穿通により腹膜炎を発症することや,腹腔内膿瘍を形成する確率はまれであると報告がある。異物の割合は日本人では食生活の影響などから魚骨が50%近くを占める。今回のように50mm超える魚骨が誤嚥の認識なく,穿孔による症状で発見された症例は極めてまれである。
著者
寺井 恵美 佐々木 愼
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.34, no.3, pp.757-760, 2014-03-31 (Released:2014-09-29)
参考文献数
28

症例は65歳,男性。下腹部痛を主訴に当院を受診した。腹部CT検査で虫垂の腫大と壁肥厚を認めたほか,ぶどうの房状の形態を呈し憩室の多発が疑われた。周囲脂肪濃度は上昇しており,虫垂憩室炎の診断のもと緊急手術を施行した。虫垂は腫大し,多発した憩室の一部が穿孔していた。検体を用いた造影検査により穿孔を伴う複数の憩室を同定した。病理組織学的にも虫垂憩室炎と診断され,穿孔した憩室も含め全て仮性憩室であった。虫垂憩室炎は穿孔率が高く,有症状で虫垂憩室を伴う虫垂炎あるいは虫垂憩室炎は症状の程度にかかわらず保存的治療ではなく手術を検討すべきであると考えられているが,その一方で術前に虫垂憩室を診断するのは困難である。今回われわれは術前に診断しえた虫垂仮性憩室炎穿孔の1症例を経験したので文献的考察を加えて報告する。