著者
寺園 司 永田 雅彦 Affolter Verena K.
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.7-10, 2006 (Released:2006-08-29)
参考文献数
15

3歳齢,雌のバーニーズ・マウンテン・ドッグに躯幹背側,大腿,頭部を中心とした結節や潰瘍が多数生じ,強膜の充血や角膜の浮腫も認められた。抗生剤とプレドニゾロンで改善に乏しく皮膚生検を施行した。皮下脂肪織と真皮深層を中心に異型性に乏しい組織球様単核球を主体とした細胞浸潤が認められた。臨床像および組織像より,全身性組織球症と診断した。これまでの治療に免疫調整作用を有するグルセオフルビンを併用したところ,角膜浮腫は明らかに改善し,潰瘍も縮小傾向を示した。その後も薬物療法を断続的に投与し,随時支持療法を導入することで5年間管理することができたが,8歳時に呼吸不全により他界した。剖検は施行できなかった。我々が調べ得た限り,本邦における全身性組織球症の第1例と思われた。