著者
清水 裕子 横山 真緒 清水 栄治 永田 雅彦
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.15, no.4, pp.201-205, 2009 (Released:2010-03-11)
参考文献数
7

ペットショップ自家製ドッグフードを与えられていた5歳齢,去勢雄,ミニチュア・ダックスフンドの口囲に鱗屑,肉球に糜爛潰瘍,包皮先端・肛囲に糜爛が生じ当院を受診した。全身症状はなく,血液検査で特記すべき異常も認めなかった。病理組織学的検査では,表皮および毛包内の不全角化と真皮浅層の炎症がみられた。ジェネリック・ドッグフード皮膚症を疑い,食事として適切なミネラルを含量し,亜鉛や必須脂肪酸が増強されたセレクトプロテインライト(コッド&ライス)ドライフード(ロイヤルカナンジャポン,東京)に変更したところ,約1週間で改善傾向がみられ,4週後に軽快した。後日実施したフードの食品分析結果において,亜鉛と銅がAAFCOの成犬最小栄養素許容量以下であった。
著者
内田 二依菜 園田 祐三 熊倉 梓 金井 泉 今井 昭宏 永田 雅彦
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.24, no.4, pp.211-214, 2018 (Released:2018-12-21)
参考文献数
11

1歳齢,避妊雌のヒマラヤンの側腹部,尾根部,前胸部に外傷性脱毛がみられ,体幹触診時に過剰な舐め行動が誘導された。プレドニゾロン,選択的セロトニン再吸収阻害薬,神経障害性疼痛治療薬にて改善するも,プレドニゾロン休薬に合わせ再発を繰り返し,その後認められた落屑性脱毛からDemodex gatoiを検出した。フルララネル製剤を投薬し2ヶ月後に軽快,D. gatoiも陰性になった。これまで使用していた投薬を終了後外傷性脱毛が再発,フルララネル製剤3ヶ月毎投与とともにプレガバリンとフルオキセチンの再導入により寛解,プレドニゾロンとフルララネル製剤を休薬することができた。D. gatoi寄生とネコ知覚過敏症候群との関係を考察した。
著者
藤森 基成 泉 憲明 永田 雅彦
出版者
Japanese Society of Veterinary Dermatology
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.12, no.4, pp.247-249, 2006
被引用文献数
1

2歳齢,雄のロングコート・チワワの両眼瞼縁に限局し徐々に悪化する丘疹の集簇を認めた。経口抗生剤にて改善なく皮膚病理組織検査を施行したところ,真皮に多巣状の化膿性肉芽腫を認めた。PAS染色で菌要素を認めず特発性非感染性肉芽腫症と診断した。経口プレドニゾロン1.0 mg/kg SIDにて1週間で劇的に改善した。<br>
著者
高藤 典靖 根本 晴一 永田 雅彦
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.8, no.4, pp.103-106, 2002 (Released:2007-02-15)
参考文献数
6

11歳,避妊済み雑種雌猫の四肢掌球が腫脹し,漸次悪化したため,発症5カ月後に受診した。組織学的に真皮内に著しいプラズマ細胞浸潤を認め,血清蛋白分画で高ガンマグロブリン血症がみられた。プラズマ細胞性肢端皮膚炎と診断し,塩酸ドキシサイクリン5 mg/kg BIDで治療した。治療7週間後に略治,休薬した。その後8ヶ月再発を認めていない。
著者
内田 雅之 川上 正 川上 志保 永田 雅彦
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.185-188, 2017 (Released:2017-12-20)
参考文献数
13

9歳齢,避妊雌のミニチュア・シュナウザーが,幼少より夏を中心に悪化する躯幹の痒みで当院紹介受診となった。ほぼ全身に鱗屑,丘疹,紅斑,脱毛とともに汗と思われる湿潤が認められた。皮膚伸展指数は16.6%であった。毛検査,皮膚掻爬検査で特記すべき異常はなく,皮膚生検で著しく拡張したアポクリン汗腺,毛包の萎縮,淡染色性の真皮結合織に不規則な配列が認められた。支持組織の脆弱性による汗腺の拡張と多汗を疑い,犬の骨関節疾患治療薬であるポリ硫酸ペントサンナトリウムで治療したところ,湿潤と痒みが略治した。
著者
寺園 司 永田 雅彦 Affolter Verena K.
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.12, no.1, pp.7-10, 2006 (Released:2006-08-29)
参考文献数
15

3歳齢,雌のバーニーズ・マウンテン・ドッグに躯幹背側,大腿,頭部を中心とした結節や潰瘍が多数生じ,強膜の充血や角膜の浮腫も認められた。抗生剤とプレドニゾロンで改善に乏しく皮膚生検を施行した。皮下脂肪織と真皮深層を中心に異型性に乏しい組織球様単核球を主体とした細胞浸潤が認められた。臨床像および組織像より,全身性組織球症と診断した。これまでの治療に免疫調整作用を有するグルセオフルビンを併用したところ,角膜浮腫は明らかに改善し,潰瘍も縮小傾向を示した。その後も薬物療法を断続的に投与し,随時支持療法を導入することで5年間管理することができたが,8歳時に呼吸不全により他界した。剖検は施行できなかった。我々が調べ得た限り,本邦における全身性組織球症の第1例と思われた。
著者
村山 信雄 田村 一朗 永田 雅彦
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.12, no.3, pp.157-159, 2006 (Released:2006-10-12)
参考文献数
9

5歳齢,雌のキャバリア・キング・チャールズ・スパニエルに,眼囲,口囲,肘,踵,肉球,陰部周囲におよぶ角化性皮疹が生じた。発症に先行して,出産と食餌変更があった。病理組織学的検査で毛漏斗部におよぶ錯角化と著しい表皮肥厚を認め,一部に浮腫がみられた。真皮乳頭では多形核球や単核球の浸潤が観察された。血液検査,甲状腺ホルモン検査,血清アレルギー検査で特記すべき異常はみられなかった。以上より亜鉛反応性皮膚症と診断した。亜鉛製剤の内服後角化の改善を認めたが痒みは持続し,前医にて単独投与では奏効しなかったプレドニゾロンの内服を併用したところ皮疹は消退した。寛解後亜鉛補充療法もステロイドも必要としなかった。自験例が本症の好発犬種ではないことから,病因として食餌による一時的な亜鉛吸収傷害が予想された。
著者
鳥飼 和史 星野 友哉 永田 雅彦
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.28, no.1, pp.17-20, 2022 (Released:2022-03-12)
参考文献数
11

5ヶ月齢,メスのボルゾイの腹部に境界明瞭な淡紅色毛包性色素斑を左右対称性に認めた。病変部の組織生検により脂腺の増生とともに脈管拡張が観察された。臨床的および組織学的に病変は成長とともに消退し,再発はなかった。その病態として成長期内分泌系の関与を推察した。
著者
永田 雅彦 柴田 久美子 入交 眞巳 Luescher Andrew U
出版者
Japanese Society of Veterinary Dermatology
雑誌
獣医皮膚科臨床 (ISSN:13418017)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.13-16, 2001

アレルギー性皮膚疾患と診断されていた猫2例に精神的要因の関与を認めた。1例目は10カ月齢, 雌のラグドールで, 3カ月齢より舐性行動や過敏症候群がみられた。アレルギーが疑われたが種々のアレルゲン回避で改善がなく, 精神療法と塩酸フルオキセチンなどで略治したことから精神的要因の関与が示唆された。2例目は4歳齢, 避妊雌の雑種猫で, 1年前より非定型的な好酸球性肉芽腫がみられた。初発時にノミ寄生と皮膚炎がみられたがノミ防除で改善せず, 複数のアレルギーを考慮した。除去食も有効であったが腹部の対称性脱毛が持続し, 精神療法と塩酸フルオキセチンなどで略治したことから精神的要因の関与が示唆された。
著者
周藤 行則 周藤 明美 清水 篤 石河 晃 永田 雅彦
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.11, no.3, pp.121-123, 2005 (Released:2006-10-27)
参考文献数
8

5歳齢, 雄のミニチュア・ダックスフントに皮膚の過伸展と脆弱性がみられた。頚部背側の皮膚伸展指数は20.9%と著しい高値を示した。皮膚生検で真皮結合織は粗で, 電子顕微鏡検査では細線維束の太さや形態の不均一が観察された。以上より, エーラス・ダンロス症候群と診断した。姑息的ながらビタミンCの経口投与を実施したが, 皮膚の脆弱性は次第に悪化した。
著者
羽田 麻梨絵 田村 恭一 織間 博光 金園 晨一 小松 隆志 石村 剛志 折戸 謙介 永田 雅彦
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.24, no.3, pp.147-152, 2018 (Released:2018-09-29)
参考文献数
11
被引用文献数
1

ゾニサミドによる薬疹と診断した犬の2例を報告する。症例1は6歳齢,雌のマルチーズで紅皮症を,症例2は10歳齢,去勢雄のミニチュアピンシャーで多形紅斑-中毒性表皮壊死症を発症した。いずれの症例も症状,血液検査と病理所見からゾニサミドによる薬疹を疑い,その休薬により皮疹が消退した。リンパ球幼若化試験を実施したが2症例とも陰性であった。今後症例を集積しゾニサミドによる薬疹の発症頻度や病理発生の検討が必要と思われた。
著者
柴田 久美子 永田 雅彦 田上 久美 石野 孝 佐藤 常男 南光 弘子
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13418017)
巻号頁・発行日
vol.5, no.1, pp.10-13, 1999

6歳齢, 去勢雄, ビション・フリーゼに, 沈うつ, 嗜眠とともに, 抗生物質で改善しない発熱と排液を伴う多発性の皮膚結節が生じた。血液検査および血液化学検査で貧血, 総白血球数増加, ALPの上昇がみられた。病理組織学的検査で細菌を認めない, 激しい小葉性皮下脂肪織炎が認められた。組織の細菌培養検査および真菌培養検査は陰性であった。以上より, ヒトでこれまでウェーバー・クリスチャン病と呼ばれていた特発性結節性脂肪織炎と診断した。
著者
永田 雅彦 柴田 久美子 入交 眞巳 Luescher Andrew U.
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医皮膚科臨床
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.1-4, 2000
被引用文献数
3

アトピー性皮膚炎と診断されていた犬に精神的要因が関与していた2症例に遭遇した。第1例は6カ月齢, 雄の柴犬で3カ月前より四肢の舐性行動がみられた。臨床像よりアトピー性皮膚炎が疑われたが, アレルギー検査は陰性で, 生活歴より強迫性障害と診断し, 行動矯正により略治した。第2例は6歳齢, 雌のシー・ズーで3年前より皮膚病がみられた。臨床像はアトピー性皮膚炎に合致し, アレルギー検査でコナヒョウヒダニ陽性であった。治療により改善を認めたが, エピソード的な掻破行動が反復。生活歴より強迫性障害と診断し, 行動矯正およびクロミプラミンにより略治した。
著者
大池 美和子 今井 昭宏 吉池 薫 高畑 尚廉 永田 雅彦
出版者
日本獣医皮膚科学会
雑誌
獣医臨床皮膚科 (ISSN:13476416)
巻号頁・発行日
vol.23, no.4, pp.189-193, 2017 (Released:2017-12-20)
参考文献数
21
被引用文献数
1

犬アトピー性皮膚炎2例の急性期治療にJAK 阻害薬であるオクラシチニブ(アポキル)を使用,そう痒は急速に消退したが減量が困難であった。増悪因子に対応後,組換え型ダニアレルゲンDer f 2-プルラン結合体製剤(アレルミューンHDM)を早期より併用し,アポキルを迅速に規定以下に減量することができた。以後月次アレルミューンHDM 10 μg投与により1年に渡り良好に維持されている。両剤の併用による明らかな有害事象はなく,急性期CADにおけるアポキルに併用したアレルミューンHDMの有用性が期待された。