著者
長野 修 多田 圭太郎 芝 直基 平山 敬浩 黒田 博光 寺戸 道久 氏家 良人
出版者
一般社団法人 日本救急医学会
雑誌
日本救急医学会雑誌 (ISSN:0915924X)
巻号頁・発行日
vol.23, no.5, pp.199-204, 2012-05-15 (Released:2012-06-15)
参考文献数
14

ビタミンC(vitamin C: VC)投与が腎障害に関与した可能性があると考えられた広範囲熱傷の2例を経験した。【症例】症例1:70歳の男性(体重77 kg),熱傷面積45%,Burn Index(BI)41。急性期にVC補充(2.5-4 g/day)を行い,腎機能の悪化を認めた。第4病日(来院日を第1病日とする)にVC補充を中止して持続血液濾過透析(continuous hemodiafiltration: CHDF)を開始した。第21病日まで血液浄化を施行して腎機能は回復した。症例2:68歳の男性(体重89 kg),熱傷面積63%,BI 41。急性期にVC大量投与(25 g/初期24時間)を行ったが腎機能は維持された。第9病日よりVC補充(0.6-1.2 g/day)を再開し,その後徐々に腎機能が悪化した。VC補充(0.3-0.5 g/day)を継続したまま第12病日よりCHDFを施行したが,腎機能は回復しなかった。【考察】広範囲熱傷では創傷治癒促進や初期輸液量軽減を目的としてVC投与が併用されることが多い。一般にVC投与の安全性は高いと考えられているが,代謝産物である蓚酸の蓄積によって腎障害を来す可能性があることや腎不全の回復を妨げることが指摘されている。2症例とも腎生検を施行していないため,腎障害とVCの因果関係は明確ではない。しかし,どちらも経過中に尿沈査で蓚酸カルシウム結晶を認め,症例1ではCHDF排液中の蓚酸濃度測定によって高蓚酸血症の存在が確認された。広範囲熱傷では種々の原因から急性腎不全をしばしば合併するが,これらの2症例ではVC投与の関与を否定できないと考えられた。また,症例1では蓚酸除去におけるCHDFの有用性が示唆された。【結語】VC投与中は腎機能に注意が必要であり,腎機能が悪化する場合はVC投与を中止して積極的な血液浄化を施行すべきであると考えられた。