著者
菊池 順 寺沢 和洋 村山 秀雄 錦戸 文彦
出版者
早稲田大学
雑誌
基盤研究(B)
巻号頁・発行日
2003

液体Xeは、原子番号54,密度約3.0の透明な液体である。γ線用のシンチレーターとしては、NaI(T1)結晶並みの発光効率を持ち、しかも、発光の減衰時間はBaF2よりも遅いが、NaI(T1)やLSOよりも遥かに早く、2nsecと22nsecとの2成分からなっている。その高発光効率、短減衰時間等の特徴を利用すれば、以下のような利点がある。1つは、真空紫外光は反射率が低く、反射で集光することは困難である。そこで、出来るだけ直接光のみを多量に集光することによってエネルギーの分解能を挙げることが出来る。また、このことは、複数の光電子増陪管によって観測されるそれぞれの光量を比較することによって発光源の位置を決定することが出来る事を意味する。更に、使用されたPMTの発光出力の総和を取ることによってエネルギー測定が可能であるとともに分解能をも向上させることが出来る。そのため、液体Xe中でも稼働し、真空紫外光にも有感で、5気圧でも稼働する新型のPMTを浜松フォトニクス社と共同で開発した。このPMTを利用して、小型液体Xe-PETを試作し、まずこのような点を実験的に検証することにした。つぎに液体Xeからの速い発光を利用すれば、きわめて高速のシステムを作ることが可能であるばかりでなく、time of flight(TOF)の技術を使用して、位置の精度を上げることが可能となる。このような方式は、これまで、BaF2で試みられていたが、その発光量が余りにも少なかったために、位置分解能を議論するところまで行かなかった。我々の実験では、液体Xeで2PMTを使用して高速重イオンに対して25psecの時間分解能を得ており、このことはPMTに十分な利得があれば、位置分解能がcmからmmのオーダーに入る可能性があることを示している。TOFによる位置の決定は、非常に、簡単なので、これはPET技術に新しい面を切り開くことになると考えられる。