著者
岩室 雅也 川口 光彦 寺田 亮 大澤 俊哉 山本 和秀 糸島 達也 高橋 和明
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.512-515, 2005
被引用文献数
6 7

症例は71歳, 女性. 2004年12月21日に近医で行った血液検査でAST 593 IU/<i>l</i>, ALT 661 IU/<i>l</i> と肝機能障害を認め, 12月22日に当院紹介となった. 発症の約4週間前に漢方薬の内服を開始しており, またリンパ球幼弱化試験 (lymphocyte stimulation test : LST) が陽性を示したことから, 当初は漢方薬による薬物性肝障害が疑われた. しかし血中E型肝炎ウイルス (hepatitis E virus : HEV) RNAが陽性で, HEV IgM抗体価が有意に上昇していることが明らかとなり, 最終的にE型急性肝炎と診断した. 問診により10月頃に市販のブタ肝臓を摂食していたことが判明し, 感染源として疑われた. 海外渡航歴, 野生の蓄肉の摂食歴はなかった. 本例はE型急性肝炎の症例であるが, 薬物性肝障害の診断基準を満たしたため, その鑑別が問題となった. 漢方薬はLSTで偽陽性を示すことが多く, LSTの結果を以て漢方薬を肝障害の原因薬物と断定することはできない. またE型急性肝炎の診断においては, 海外渡航歴, 野生の蓄肉の摂食歴とともに, 市販のブタ肝臓の摂食歴を聴取することが重要である.