著者
岩室 雅也 神崎 洋光 田中 健大 川野 誠司 河原 祥朗 岡田 裕之
出版者
一般財団法人 日本消化器病学会
雑誌
日本消化器病学会雑誌 (ISSN:04466586)
巻号頁・発行日
vol.113, no.7, pp.1216-1222, 2016-07-05 (Released:2016-07-05)
参考文献数
18
被引用文献数
2

77歳男性.慢性腎不全にて血液透析中であり,炭酸ランタンを3年間服用中.早期胃癌内視鏡治療後の定期検査として実施した上部消化管内視鏡検査にて,角部大弯および前壁に発赤域を認め,部分的に微細顆粒状の白色変化をともなっていた.生検では粘膜固有層に好酸性物質の沈着を認め,エネルギー分散型X線による元素マッピングおよびスペクトル解析にてランタンおよびリンが検出され,胃粘膜内のリン酸ランタン沈着症と診断した.
著者
岩室 雅也 田中 健大 榮 浩行 安部 真 河野 吉泰 神崎 洋光 川野 誠司 河原 祥朗 岡田 裕之
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.64, no.1, pp.29-36, 2022 (Released:2022-01-20)
参考文献数
18

【背景・目的】胃癌と非癌粘膜の白色球状外観(white globe appearance:WGA)の違いを明らかにする.【方法】胃WGA症例の内視鏡所見と臨床的特徴を後ろ向きに解析した.【結果】胃癌18例,非癌23例にWGAを認めた.胃癌症例は7例(38.9%),非癌症例は17例(73.9%)がプロトンポンプ阻害剤(proton pump inhibitor:PPI)を内服していた.病理学的には,胃癌症例(18例)のうち腺管の嚢胞状拡張は12例(66.7%),腺腔内壊死物質は12例(66.7%),壁細胞の過形成と内腔への鋸歯状の突出(parietal cell protrusion:PCP)は1例(5.6%)でみられた.一方,非癌症例のうち14例で生検が実施され,腺管の嚢胞状拡張は8例(57.1%),PCPは7例(50.0%)でみられたが,腺腔内壊死物質は指摘できなかった.非癌群において,自己免疫性胃炎を2例,内視鏡的粘膜下層剝離術後瘢痕を2例,腺腫を1例,ランタン沈着を1例,胃MALTリンパ腫を1例に認めた.【結論】胃癌粘膜と非癌粘膜ではWGAの成因は異なり,非癌症例ではPPI服用が関与している可能性が示唆された.
著者
岩室 雅也 神崎 洋光 川野 誠司 河原 祥朗 田中 健大 岡田 裕之
出版者
一般社団法人 日本消化器内視鏡学会
雑誌
日本消化器内視鏡学会雑誌 (ISSN:03871207)
巻号頁・発行日
vol.59, no.6, pp.1428-1434, 2017 (Released:2017-06-20)
参考文献数
16
被引用文献数
2

当院で胃・十二指腸へのランタン沈着症と診断した10症例について,内視鏡所見および臨床背景を後ろ向きに検討した.10例(男性9例,女性1例)の平均年齢は64.3歳(42歳~77歳)であり,全例が慢性腎不全のため血液透析中であった.炭酸ランタンの服用期間は12~86カ月.全例で胃にランタン沈着があり,通常観察にて白色病変として観察された.拡大観察を行った6例では微細顆粒状の白色沈着物がみられた.3例では十二指腸にもランタン沈着があり,いずれも白色の粘膜を呈した.これらの所見がみられた場合には,ランタン沈着症として経過を追跡する必要があると考えられた.
著者
岩室 雅也 川口 光彦 寺田 亮 大澤 俊哉 山本 和秀 糸島 達也 高橋 和明
出版者
The Japan Society of Hepatology
雑誌
肝臓 (ISSN:04514203)
巻号頁・発行日
vol.46, no.8, pp.512-515, 2005
被引用文献数
6 7

症例は71歳, 女性. 2004年12月21日に近医で行った血液検査でAST 593 IU/<i>l</i>, ALT 661 IU/<i>l</i> と肝機能障害を認め, 12月22日に当院紹介となった. 発症の約4週間前に漢方薬の内服を開始しており, またリンパ球幼弱化試験 (lymphocyte stimulation test : LST) が陽性を示したことから, 当初は漢方薬による薬物性肝障害が疑われた. しかし血中E型肝炎ウイルス (hepatitis E virus : HEV) RNAが陽性で, HEV IgM抗体価が有意に上昇していることが明らかとなり, 最終的にE型急性肝炎と診断した. 問診により10月頃に市販のブタ肝臓を摂食していたことが判明し, 感染源として疑われた. 海外渡航歴, 野生の蓄肉の摂食歴はなかった. 本例はE型急性肝炎の症例であるが, 薬物性肝障害の診断基準を満たしたため, その鑑別が問題となった. 漢方薬はLSTで偽陽性を示すことが多く, LSTの結果を以て漢方薬を肝障害の原因薬物と断定することはできない. またE型急性肝炎の診断においては, 海外渡航歴, 野生の蓄肉の摂食歴とともに, 市販のブタ肝臓の摂食歴を聴取することが重要である.