著者
寺田智祐
出版者
医薬ジャーナル社
雑誌
医薬ジャーナル (ISSN:02874741)
巻号頁・発行日
vol.54, no.6, pp.1383-1385, 2018-06-01

2017年のノーベル経済学賞は,行動経済学に関する業績であった。実は,行動経済学が脚光を浴びたのは,2002年のノーベル経済学賞まで遡る。当時の受賞理由は,「不確実性下における人間の判断や意思決定に関して,心理学の研究成果を経済学の考え方に統合したこと」とある。それまでの伝統的な経済学では,「ホモ・エコノミカス」と呼ばれる,非常に合理的で,完全な情報と計算能力を持っていて,常に自分の満足度を最大化するように行動する人間像を想定していたが,行動経済学は従来の説に対する強烈なアンチテーゼでもあった。振り返って,医療界はどうであろうか?例えば,患者は常に病気の治療に前向きに取り組み,医師の指示には100%従い,治療中の様子を医療者へくまなく報告する者ばかりであろうか?実際そうでないことは,誰でも知っている。本稿では行動経済学が示唆してくれる,行動科学の知見について紹介したい。