著者
森 武宏 小亀 英己
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.76, no.6, pp.898-901, 1993-06-25

カリトノフの定理は,70年代末に初めて報告された,どちらかと言えば古典的な内容の多項式の安定定理である.80年代半ばに至って,ロバスト制御理論の隆盛を背景に改めてその価値が見直され,ロバスト安定解析に関連したさまざまな研究の動機を与えてきた.また,その意味するところの大きさに比して定理自身は至って簡潔であるが故に,定理そのものが研究の対象となり多くの別途証明が提示されている.それらは,おおむね,周波数領域における議論に基づくものである.定理は多項式のフルヴィッツ安定性に関するものであるから,フルヴィッツの安定規範との関連が探られてしかるべきと思われるが,筆者らの知る限りこの線に沿った検討はいまだ報告されていない.本論文は,この課題に取り組んだ結果を報告するものである.すなわち,フルヴィッツ安定判別法を主要な道具にして,カリトノフの定理を証明する.フルヴィッツ規範のほかに,従前の多くの結果と異なり多項式の根とこの根における他の多項式の値の符号をもとにして求める結果が導かれてる.