著者
榎田 翼 若槻 尚斗 水谷 孝一
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J96-A, no.5, pp.197-204, 2013-05-01

本論文は,金管楽器において吹鳴圧力に加え唇のアパチュアを変化させたときの吹鳴音高を計測することで,吹鳴圧力とアパチュアが吹鳴音の音高に与える影響を明らかにすることを目的とする.具体的にはアンブシュア可変機構を有する人工吹鳴装置を用いて,吹鳴圧力とアパチュアの大きさを制御しながら吹鳴音の計測を行った.結果として吹鳴圧力とアパチュアの相互関係により励起される吹鳴音の周波数が決定されることを確認した.また,アパチュアの大きさを徐々に大きくしていく場合と小さくしていく場合では吹鳴音の周波数が遷移するアパチュアの大きさが異なるという結果が得られた.更に,アパチュアを小さくすれば吹鳴音の周波数が高くなるという奏者の見解とは逆に,人工吹鳴においてアパチュアを大きくしたときに吹鳴音の周波数が高くなるという興味深い結果が得られた.
著者
青木 義満 橋本 周司
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.82, no.4, pp.573-582, 1999-04-25
被引用文献数
27

マン・マシンインタフェースにおける擬人化エージェントや, 映像エンターテイメント分野, 医療分野等さまざまな分野において, 人物の顔形状モデルを用いて顔画像を合成する研究がなされている. その中でも顔の物理的なモデリングの手法は, 自然な表情合成が可能なだけでなく, 筋肉の挙動に対する表情変化をシミュレートできるという利点があり, 既にいくつかのモデルが提案されている. 本論文では, 頭部の3次元CTデータから顔表面及び骨格形状データを取得し, 解剖学的な知見を基に皮膚・表情筋のモデリングを行うことで作成した, 正確な形状とリアルな表情生成機構をもった物理モデルを提案する. また, このモデルを用いた表情生成実験を通して, 表情筋の収縮とそれにより生じる顔面変形との対応関係を調べた. また, 解剖学的に精巧であるというモデルの特性を生かし, 医学的な応用を検討する.
著者
山田 奨治
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.329-336, 1996-02-25
被引用文献数
25

脳波の一種である事象関連電位P300を利用した脳波キーボードの入力速度向上のために, P300を加算平均しない, 単一試行での判別と文字入力速度向上のための手法を検討した. そのために (1) 特徴量としてウェーブレット係数の導入, (2) 誤判別の許容と瞬目による有効なキャンセル方法の検討, (3) 1文字の平均入力時間を最短とする判別エラー率の理論的検討, を行った. 4人の被験者に対してP300の取得実験を行い, 得られたデータに線形判別分析法を行って判別力を試験した. その結果, 特徴量としてのウェーブレット係数の有効性が認められた. 瞬目による誤判別のキャンセルは, 即時性とチャネルやデバイスの追加なしに行える点で有効であることがわかった. また判別エラー率から1文字の平均入力時間を推定する式を示し, 最適な判別エラー率を推定した. その推定値を実証するために脳波キーボードを試作し, 4人の被験者に対して利用実験を行った. その結果, ほぼ推定値どおりの入力速度が得られることを確認した. 得られた入力速度は平均 3.0文字/分, 15.6ビット/分で, これまでの 1.3倍の速度を達成した.
著者
菱沼 勲 三好 徹哉 稲葉 直彦
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.84, no.9, pp.1157-1166, 2001-09-01
被引用文献数
5

極めて簡単な微分方程式において, 一つの系パラメータに例えば10^<-4>のような極めて微小な変化を与えるだけで, 系に生じるlimit cycleの振幅が大きく変化する場合がある.このような現象はlost solutionと呼ばれ, その中間の振幅をもつ解はあひる解と呼ばれている.本論文では, レイリー方程式に生じるあひる解が, 微小周期外力の印加に対してどのような振舞いをするかを数値実験によって調べた.振幅1.0×10^<-4>の正弦波外力の注入によっていとも簡単に周期解が崩壊し, 周期倍分岐によってカオスが発生することが明らかとなった.また, 興味深い3種類の周期アトラクタの発生が確認された.
著者
加瀬 嵩人 能勢 隆 千葉 祐弥 伊藤 彰則
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J99-A, no.1, pp.25-35, 2016-01-01

近年,非タスク指向型の音声対話システムへの需要が拡大しており,様々な研究がされている.それらほとんどの研究は言語的な観点から適切な応答の生成を目指したものである.一方で人間同士の会話においては,感情表現や発話様式などのパラ言語情報を効果的に利用することにより,対話を円滑に進めることができると考えられる.そこで我々はシステムの応答の内容ではなく,応答の仕方に着目し,感情音声合成を対話システムに用いることを試みる.本研究ではまず,適切な感情付与を人手により与えた場合に実際に対話システムの質が向上するかを複数のシナリオを作成して主観基準により評価する.次に,感情付与を自動化するために,システム発話に応じた付与とユーザ発話に協調した付与の二つの手法について検討を行う.評価結果から,感情を自動付与することで対話におけるユーザの主観評価スコアが向上すること,またユーザ発話に協調した感情付与がより効果的であることを示す.
著者
広林 茂樹
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.91, no.1, pp.153-161, 2008-01-01

仮想的な市場モデルに基づいて,経済時系列の予測を行う研究は盛んに行われているが,実際の市場には様々な変動要因が存在するため,長期的な予測は難しい.しかし,経済学では景気循環論やエリオット波動に代表されるように,経済時系列の変動には短期的なものから長期的なものまで様々な周期性の存在が仮定されている.そこで,近年筆者が開発している新しい高分解能周波数解析法(NHA)を用いて,経済時系列の周期性の解析を行い,複合的な周期信号の組合せによって長期的な経済時系列の予測を試みた.検証実験では,過去15年間程度の日経平均株価終値のデータにおいて,過去2年間程度の分析窓長でNHAによる解析を行い,その後2年間の価格変動を予測した.また,本手法における予測可能時期を推定するため,この15年間から学習期間のためのはじめ2年間と評価のための終わりの2年間をそれぞれ除いた約11年間の区間において,予測結果の検証を行った.アジア通貨危機とアメリカ同時多発テロ事件など,世界的に大きな事件が発生している時期付近では予測誤差が大きくなるものの,それ以外の期間ではおおむね変動の概略をとらえることができた.
著者
長田 典子 岩井 大輔 津田 学 和氣 早苗 井口 征士
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.86, no.11, pp.1219-1230, 2003-11-01
被引用文献数
13

従来の感性情報処理では,メディアを構成するパラメータとイメージとの対応関係を,感性語を介して表現していた.これに対し感性語を介さないメディア間の直接的・感性的な対応付けをノンバーバルマッピングと呼ぶ.そして「色聴現象」(音を聴くと色が見える)に着目し,音楽における調・音高・音色のパラメータを変化させた際に色聴保持者が感じる色の対応付け(マッピング)の規則性を,色相・明度・彩度のパラメータを用いて明示的に表現した.次にこのマッピングが色聴をもたない一般人にも受容可能かどうかの検証を行った.まず一対比較法による感覚尺度化を行い,音高と音色に関するマッピングについては一般群に受容されることを明らかにした.次に調同定トレーニングを実施し,調に関するマッピングを利用する試みを行ったところ,一般群にも色聴に似た現象が観察された.この結果,一般群においても音と色のマッピングが潜在的に保有される可能性を示した.
著者
石原 茂和 石原 恵子 長町 三生
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.82, no.1, pp.179-189, 1999-01-25
被引用文献数
6

感性工学では評価対象について質問紙を用いて, 被験者による評価実験を行う. この評価実験で得られるのは数十の言葉による多次元データである. 重回帰ベースの多変量解析では大量のサンプル数が必要となり, 現実の実験・分析ともに難しい点があった. 本論文では, 次元数に対して比較的少数しか現実には得ることのできない感性評価データを解析することを目的として, 自己組織化ニューラルネットワークの学習則を改良し, これを組み合わせることによって階層的クラスタ分析を行う方法であるarboARTを考案した. この方法では一般的な階層的クラスタリング手法に比べると, より少ない計算量で評価対象を感性評定値に従って階層的に分類することができる. また同時に, クラスタのプロトタイプがら, 感性と評価対象との関係を得ることができる. 実際の感性評価実験データを分析した結果, その分類能力は一般的な階層的クラスタリング法と同等であり, 他の多変量解析手法の結果とも共通性があった. 手法の汎用性を検討するために, 標準テストデータを用いて誤分類数と誤差を計測した結果, 良好な結果が得られた.
著者
宮野 尚哉 辰巳 憲一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.87, no.9, pp.1226-1235, 2004-09-01

日経平均株価及び日経ジャスダック平均の日終値からなる日次株価指数について,土日休祭日の欠測値を線形補間法により合成し,日次リターン時系列を作成した.リターン変動の複雑さを,埋込空間における近接軌道群の平行性及びKolmogorov-Sinaiエントロピーによって評価した.リターンが月曜日に特有の変動を示す現象,すなわち,月曜日効果は存在する可能性が高い.
著者
小松 孝徳 秋山 広美
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.92, no.11, pp.752-763, 2009-11-01

本研究では,ユーザが何かを表現したいけれどもうまく表現しきれないイメージがオノマトペに込められていると考え,そのオノマトペのイメージを数値化し,それを対象に付与することでオノマトペのイメージを具体化して表現するシステムを開発した.まず,言語とは独立した音響的な特徴から感じるイメージである音象徴に基づき子音や母音など音節の構成要素に対して八次元属性ベクトルを設定し,その要素を組み合わせることでオノマトペ全体の印象を八次元ベクトルとして表現することとした.そして,オノマトペの八次元属性ベクトルとロボットのモーションとの属性を対応づけることにより,ユーザがオノマトペに込めたイメージをロボットのモーションに反映するようなシステムを構築した.実際にシステムを操作した体験者に対して,本システムに関するアンケート調査を行ったところ,「操作が楽しい」「また使いたい」という項目に対して,大多数の体験者から積極的に高い評価を受けていることが明らかになったが,「自分の思ったとおりにロボットが動いた」という項目については,そのような積極的に高い評価を受けていなかったことが明らかになった.この原因としては,ロボットのモーションの動作曲線の形状変化が体験者にとって非常に分かりにくかったことに起因していると考えられ,オノマトペの属性値とロボットのモーションの属性との対応を再検討する必要があると考えられた.
著者
児玉 謙太郎 牧野 遼作 清水 大地
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J102-A, no.2, pp.26-34, 2019-02-01

本研究では,じゃんけんというマルチモーダルなコミュニケーションにおいて,音声による聴覚情報が参与者間の身体の協調・同期に及ぼす影響を実験的に検討した.その際,力学系アプローチという視点からコミュニケーションを自己組織化現象と捉えた.そして,コミュニケーション過程を参与者間の知覚情報を介したリアルタイムな行為の調整過程とみなし,身体協調を非線形時系列解析により評価した.実験により「最初はグーじゃんけんぽん」という掛け声を発する通常条件と掛け声を発しない声なし条件を比較した結果,じゃんけんの最終段階での参与者2名の手の振り降ろしの時間差には,条件間で有意な差はみられなかった.一方,行為の開始から終了に至る過程の参与者の手の協調における安定性と予測可能性に有意な差がみられ,通常条件のほうが,参与者間の手の協調が安定し,予測可能性が高い動きをしていたことが明らかとなった.これらの結果から,ヒトは数秒という短い時間に行われるコミュニケーションであっても,1)聴覚情報が利用できない条件では参与者らはリアルタイムに視覚情報を利用し,結果的に同期を達成できるよう柔軟に振る舞うこと,ただし,2)その行為の調整過程での身体の協調には聴覚情報が影響すること,が示唆された.
著者
竹田 仰 蒲原 新一
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.489-497, 1996-02-25
参考文献数
15
被引用文献数
12

力覚提示機能をもつ人工現実感技術の応用として, 仮想人物と腕相撲の対戦が行えるシステムを構築した. 対戦のための力覚ディスプレイには, 空気圧式のゴム人工筋を使用し, ヒトの筋力の強さと動きによく桔抗して応答できる機構設計を行った. また, 仮想人物との対戦をいかに人間同士の対戦のように見せるかということのために, 単に勝ち負けの2値的な評価手法ではなく, 知識が対戦ごとに獲得されていく分類システムと遺伝的アルゴリズムの手法を使用した. 従来, これらの手法は計算機内での生物の成長や行動の様子のシミュレーションとして使うことが一般的であった. しかし本論文では, 実際のヒ卜の腕相撲対戦中の刻々と変化する上肢の角速度や位置情報を計算機内に取り込み, それをもとに出力コードを選択して力覚ディスプレイに出力し, 対戦者の上肢の行動反応を再び入力するという外界とのインタラクティブな機能をもつ方式に応用展開している. このことにより, 対戦中にリアルタイムに戦略を学習しながら成長する腕相撲対戦システムを実現できている. また, 対戦中に仮想人物の顔の表情を変化させるなど臨場感の演出も試みている.
著者
松田 圭悟 大山 航 若林 哲史
出版者
The Institute of Electronics, Information and Communication Engineers
雑誌
電子情報通信学会論文誌 A (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.J100-A, no.12, pp.435-443, 2017-12-01

本研究では,訓練偽筆を含まない学習データを用いた組み合わせ分割署名照合法を提案する.提案手法は,まず,ペン先のx, y座標,筆速,筆圧の時系列で構成されるオンライン署名情報を入力し,筆速,筆圧をそれぞれストローク幅,濃度値に反映させた署名画像を生成する.次に,オンライン署名時系列及び生成された署名画像のそれぞれをストロークの重心位置で分割する.入力されたオンライン署名時系列及び生成された署名画像とそれぞれの分割署名をオンライン用,オフライン用の手法で照合し,照合スコアを判定用SVMで真偽判定する.判定用SVMの学習には真筆同士,真筆と偽筆の照合スコアを含む学習用データを用いる必要があるが,本論文では偽筆クラスの学習サンプルとして第三者の真筆を用いるランダム偽筆学習を提案する.また,偽筆サンプルの削減のために,One-class SVMとk-meansクラスタリングを用いた効果的なサンプリング手法も提案する.多言語署名を含むSigCompデータセットを用いた評価実験の結果,訓練偽筆を含む学習用データセットを用いて学習した場合と同程度の精度の署名照合が実現できた.
著者
嵯峨山 茂樹 板倉 文忠
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.83, no.11, pp.1244-1255, 2000-11-25
参考文献数
26
被引用文献数
3

線形予測符号化(LPC)分析と複合正弦波モデル化(CSM)分析の間にあるエレガントな関係(ここではこれを対称性と呼ぶ)について述べる.目的は, LPC, PARCOR, CSM, 線スペクトル対(LSP)などの音声スペクトルモデル化の理論に統合的な視点を与えることにある.これらの分析法はいずれもモデルの自由度に等しい個数の低次の自己相関関数を与えられたとき, モデルのパラメータを求める問題となっているが, LPCもCSMも、直交多項式の理論の観点から見ると, 音声のパワースペクトル密度関数を重み関数として定義される単位円周上の直交多項式の理論(LPCの場合)及び実軸上の直交多項式の理論(CSMの場合)であり, 定式化, 各種のパラメータの定義, 解析アルゴリズムなどに関して美しい対称性が成り立つ.また, 直交多項式の観点からLSPに対して新しい解釈を与える.
著者
趙 奇方 島村 徹也 高橋 淳一 鈴木 誠史
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.84, no.6, pp.745-758, 2001-06-01
被引用文献数
7

本論文では, 自己相関関数の雑音低減能力を利用し, 線形予測分析に基づくホルマント周波数抽出法の雑音耐性の改善を考える.自己相関関数は, 白色雑音が混入した音声信号に対して, 雑音成分を遅延の低い部分に集中させる性質がある.これを利用し, 音声信号の代わりにその自己相関関数をホルマント周波数の抽出に用いることにより, ホルマント周波数抽出の雑音耐性を改善することが可能であると考えられる.本論文では, まず自己相関関数からホルマント周波数を抽出するための原理を解析し, その問題点及び可能な解決策を詳細に検討する.そしてこれらの解析に基づき, 音声信号の自己相関関数に線形予測分析を施す提案法1を提案する.実験結果より, 提案法1を用いることによってクリーンな音声に対しては従来法と同程度の抽出精度が得られ, 雑音の混入した音声に対しては従来法より抽出精度が大幅に改善されることが確認される.しかし一方で, 強雑音環境下においては抽出精度が十分でない点も指摘し, その原因を解析した上で, 自己相関関数の引き算を利用する改善法を提案法2として提案する.実験結果は, SN比が15dB以下のとき, 提案法2ではホルマント周波数抽出誤差(Average Absolute Error)が従来法の3分の1程度に, また提案法1の2分の1程度に抑えられることを示す.
著者
松村 和仁 中村 康弘 松井 甲子雄
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.79, no.2, pp.271-278, 1996-02-25
被引用文献数
5

この論文では, 感性情報処理のために, 2次元顔画像から人の表情を生成する関数を抽出している. 人間は他人の表情からいかなる情報を得て, 個人の識別や感情の分析をしているかという問題に対して, いまだ解答が得られていない. 顔による個人識別や表情の認識に関する研究では, その特徴をどのような方法で, どのように記述するかが大きなテーマである. その一案として, 薄板スプラインを用いたメタモルフォシスにより, 表情の変化を平面顔画像上で追跡し, その変化を表情関数という形で定量的に抽出する. 更に, この表情関数を用いて, 1枚の無表情の顔画像から人間の代表的な6種類の感情を表す顔画像を生成する. この表情関数は顔を対象としたセキュリティチェックシステムの基礎となる概念である.
著者
住谷 正夫 安久 正紘 大口 國臣
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.77, no.12, pp.1787-1790, 1994-12-25
参考文献数
7
被引用文献数
2

48個のホトダイオードを並列接続して測定系自身より発生する雑音の影響を除去し,2系統の独立な光測定回路で測定光の揺らぎデータの有効性を確かめ,蛍光灯などの人工光や太陽などの自然光の時間的な照度揺らぎの特性を明らかにした.各光の揺らぎをパワースペクトルによって解析し比較検討した結果,固形燃料やアルコールランプなどの燃焼を伴う光の揺らぎには,10Hz前後にピークをもつことを見出し,また,0.1〜10Hzの周は数帯域でパワースペクトルがほぼ1/f形に成ることを見出した.自然光は0.1〜10Hzの周波数帯域で1/f形の揺らぎをもっていることなどを見出した.
著者
松村 幸輝
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.81, no.5, pp.870-880, 1998-05-25
被引用文献数
4

本論文は間欠性カオス写像を用いた移動障害物回避問題について検討している.本手法は, カオス的ゆらぎを利用して軌道制御を行うエージェント指向のロボットのモデル化を提案するものである.具体的には, 間欠性カオス写像を発生させる変形ベルヌーイ系のパラメータを変えることにり, ランダム性の強い制御から局所的に収束する制御まで容易に実現でき, より適切な軌道制御が可能になるものと考えられる.本論文では, この手法によるロボットの移動障害物回避のための軌道制御のモデリングについて述べると共に, シミュレーション結果からこの方法の有用性について検討した.この結果, (1)移動距離と消費エネルギーに関してロスが小さくなるような経路を通って障害物を回避する効率のよい軌道修正が可能となる, (2)複数の障害物で構成される複雑な環境においても簡単なアルゴリズムで適切な回避処理を実現できる, こと等を得た.
著者
寺崎 健 池口 徹 合原 一幸 田中 智
出版者
一般社団法人電子情報通信学会
雑誌
電子情報通信学会論文誌. A, 基礎・境界 (ISSN:09135707)
巻号頁・発行日
vol.78, no.12, pp.1601-1617, 1995-12-25
被引用文献数
6

本論文では,従来主として確率的な不規則現象としてとらえられてきた経済時系列データに対して,決定論的非線形ダイナミカル特性に関する解析を行う.解析の対象としたのは,対ドル円の為替レートおよび日経平均株価である.これらのデータの決定論的非線形ダイナミカル特性を定量的かつ客観的に評価するため,相関積分を用いた相関次元解析,ヤコビ行列推定法によるリヤプノフスペクトラム解析および決定論的非線形(区分線形)予測による解析を行った.相関次元解析では,いずれの場合にも相関積分から求められる局所的な傾きが収束せず,少なくとも次元が1けた程度の低次元のアトラクタを形成していないことが示唆された.リヤプノフスペクトラム解析では,いずれの場合でも最大リヤプノフ指数が正となり,決定論的カオスの特徴の一つでもある軌道不安定性を示唆する結果が得られた.最後に,決定論的非線形予測の解析結杲では,その予測精度と予測時間との関係は典型的な低次元カオスとは定性的に異なる.以上の結果により,本論文で解析した経済データは,少数自由度の力学系によって記述される典型的な決定論的カオスではない可能性が高く,軌道不安定性をもつ,より複雜な対象であることが示唆される.