著者
後藤 幸弘 小俵 主也
出版者
Japanese Society of Sport Education
雑誌
スポーツ教育学研究 (ISSN:09118845)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.41-52, 1987

関西学生サッカーリーグに所属する選手5名と未熟練者1名の計6名を対象に, 種々の速さのボールをインステップで蹴らせ, ボールスピードの調節について筋作用機序の面から検討した。すなわち, スイングスピードとボールスピードを測定し, 同時に, 下肢筋, 脊柱筋, 上肢帯筋の計14筋について筋電図を記録するとともに, 16mmカメラを用いてフォームを捉え, スイングスピードとボールスピードの間に介在する要因 (技術構造) を明らかにしようとした。<br>1) スイングスピードとボールスピードの間に技術水準の高いものほど高い相関関係がみられ, 回帰直線の傾きも大きいことが認められた。すなわち, 相関係数は技術の安定性を, 回帰係数は技術の水準を表わす指標になると考えられた。<br>2) スイングスピードを高めるためには, フォワードスイングにおいて積極的な股関節の屈曲, ならびに膝関節の伸展を行うことが重要と考えられた。すなわち, これらの関節筋の活動によってボール速度は調節されていた。<br>3) ボールインパクトまで膝関節伸展筋と股関節屈曲筋の緊張を維持すること, ならびに足関節を伸展位で固定することがフォワードスイングによって得られた運動量をボールに有効に伝えるために重要であると考えられた。<br>4) スイングスピードの割にボールスピードの低かったキックでは, インパクト時, 上記3) のいずれかの関節筋に緊張の欠如がみられた。未熟練者では, 特に足・膝関節に問題のみられる傾向が認められた。<br>5) 熟練者では, インパクト前後に股関節の屈曲に停滞がみられ, 大腿の運動量を足先に転移する, いわゆる"ムチ動作"がみられた。<br>6) 未熟練者では, 積極的な膝関節の伸展, インパクト前後における股関節屈曲の停滞, 足関節の固定は認められなかった。しかし, 5カ月の練習により, スイングスピードとボールスピードの相関, ならびに回帰係数は高値を示すようになり, 動作パターンも熟練者に近づく傾向がみられた。