著者
山科 百合子 柴田 真理子 小倉 寿美
出版者
藍野大学
雑誌
藍野学院紀要 (ISSN:09186263)
巻号頁・発行日
vol.15, pp.47-51, 2001

大阪市は日本一結核の罹患率の高い都市と言われている。ことに,日雇い労働者の多く集まるあいりん地区の結核罹患率は10万人あたり1,636.7と全国平均の47倍の高率である。その対策として,大阪市はあいりん地区の結核患者を対象に,継続治療のためDOTS(直接服薬確認による短期化学療法)を採用し,治療の中断を防ぐことにした。その結果,平成13年3月末日,DOTS療法を初めて行った22名のうち,平成13年9月末日にDOTS療法を完了した者は19名(86.4%)で,中断したものは3名(13.7%)であった。この値は,東京,川崎などとほぼ同じ数値であった。なお,これら22名のうち,過去に結核治療の中断歴のあるものは6例で,そのうちDOTSを中断したものは僅か1例にすぎず,残りの5例はDOTSを完了した。これらの事実から,DOTSが継続的な結核治療として有効なものであることがわかった。なお,DOTSの成功率の高い患者は,受診時に自分の経歴や,身の上話をしていく者が多く,このことはDOTSナースの存在がDOTS治療のために必要であることを示唆していた。