著者
青島 千洋 小倉 浩一郎 立花 栄二 告野 正典 中根 幸実 住友 正樹
出版者
一般社団法人 日本脳卒中学会
雑誌
脳卒中 (ISSN:09120726)
巻号頁・発行日
vol.33, no.3, pp.363-369, 2011-05-25 (Released:2011-05-27)
参考文献数
19

Motor cortex stimulation(MCS)が脳卒中後慢性期の上肢麻痺を改善する可能性があり,われわれはこれまで25例のMCS治療を行ってきたが,今回MCSが即時改善効果を呈した2例を報告する.症例は56歳女性(脳梗塞後6カ月,左片麻痺)と49歳男性(視床出血後3年,右片麻痺)で,ともに中等度以上の上肢麻痺が見られた.Functional MRIで同定した運動野の硬膜外に刺激電極を設置し,その手術の翌日に電気刺激をONにすると麻痺側の肩挙上が改善し,OFFにすると元のレベルへ戻るという所見を両症例で観察した.7–10日後にはON-OFFの差がなくなり,改善は持続し,3カ月後のFugl-Meyer運動機能評価では,10点以上改善していた.MCSによる上肢麻痺改善の機序は不明であるが,今回の所見は,MCSがシナプス伝達への直接的な効果を有することを示唆するものと考えられた.