著者
小倉 祐一
出版者
教育実践学会
雑誌
教育実践学研究 (ISSN:18802621)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.53-67, 2001 (Released:2021-04-30)

本稿は,茨城県常総地方(県西地域の旧結城郡・旧真壁郡)に於いて「学び方教育」を推進した稲川三郎と「綴方教育」の実践家である増田実について, その人物の概略の紹介と国語教育を中心とした授業諭などについて考察したものである。主に稲川の著書『第三の授業』と増田の著書『宿題のない学校』について論じたものである。稲川は, 国語教育における読解指導について主体的な読みを追求し, 子供が自ら学ぶ授業を「第三の授業」 と定義した。「第三の授業」は学習の過程を大切にする授業であり,稲川は,そこに人間性の育成も展望しているのである。増田は, 綴方教育に留まらず, 聴き方教育や読み方教育等の国語教育全般における貴重な実践があるが, 校長として「宿題のない学校」 というリベラルな学校運営を推進したように,優れた指導力や時代の先を見る卓越した教育観を持っていた。彼らの実践は,現在の教育現場にも多くの示唆を与えるものである。