著者
西川 洋史
出版者
教育実践学会
雑誌
教育実践学研究 (ISSN:18802621)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.62-70, 2021 (Released:2021-05-20)
参考文献数
9
被引用文献数
2

透明骨格標本の作製では,骨格染色後に筋肉を透明化するため,微細な骨やそれらの立体配置は適切に保存される。特に小型魚は全身の骨格を観察が可能なので,骨の役割を学習するのに適している。現在,理科教材会社より透明骨格標本や標本作製キットを入手することが可能であり,授業での活用も広がっていることが伺える。しかし,透明骨格標本は高価であり生徒一人一人が観察をする分を準備することは難しい。標本の透明化にはタンパク質や脂質除去が重要である。本論では,食器用洗剤への長時間浸漬による透明化を試み,脊椎骨の観察が可能なレベルまで透明化するものを見出したのでこれを報告する。また,本実践では,生徒ごとに異なる実験条件に取り組ませ,その結果を互いに評価しあい,考察をさせた。この実践プロセスから,多数の仮説設定を生徒あるいはグループごとに分担させ,それを持ち寄って結論を導くという協働型探究学習を提案する。
著者
関口洋美 阿子島茂美 吉村浩一 漆澤恭子 遊佐規子
出版者
教育実践学会
雑誌
教育実践学研究 (ISSN:18802621)
巻号頁・発行日
vol.25, pp.1-11, 2022 (Released:2022-09-23)
参考文献数
12

本研究は,児童を対象に漢字二字で構成される熟語の読みを学習しやすくする要因について明らかにすることを目的とした。そこで,読みの組み合わせ(訓訓読みと音音読み),単語としてなじみがあるまたは知っているかどうか(なじみのある高親密熟語とあまりなじみのない低親密熟語),学習効果(2 巡目の正解率)及び学年(低学年・中学年・高学年)に関連させ 5 つの仮説を立てて実験を行った。その結果,音音読みよりも訓訓読みの方が成績は良く学習効果が高いという仮説,低親密熟語よりも高親密熟語の方が成績が良く,学習効果は低親密熟語の方が高いという仮説は部分的な支持にとどまった。学年による大きな違いは見いだせなかったが,学年が進むにつれ熟語の読みの成績における個人差が減少していくことが分かった。本結果から,低親密熟語においては訓訓読みの熟語の方が成績及び学習効果が高く,それは低学年から高学年まで一貫していることが明らかとなった。
著者
西川 洋史
出版者
教育実践学会
雑誌
教育実践学研究 (ISSN:18802621)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.37-44, 2020 (Released:2021-04-30)

マニキュアは, プレパラート標本のカバーガラスのシーリングに用いられる。しかし, その乾燥には時間がかかるだけではなく, アセトンやブチル酢酸などの有機溶剤の刺激臭があるため, 学校の授業での使用は避けたほうがよい。紫外線硬化樹脂は, 表面コーティングや接着あるいはシーリングに使用される工業用素材であるが, ネイルアートではマニキュアの代わりに利用される。この液体状の樹脂はUVA波長(315~400 nm)の照射によって数分間で硬化するため, 作業時間が短縮できるだけではなく臭気も弱い。そこで本研究ではメチレンブルー水溶液を封入したプレパラート標本を用いて, 数種類の紫外線硬化樹脂の水分の蒸発抑制能について検討した。その結果, プレパラート標本を20℃2週間でインキュベートした場合, 紫外線硬化樹脂はマニキュアよりも有意に水分蒸発を抑制した。紫外線硬化樹脂によるシーリング法はその扱いやすさと保存率の高さから, マニキュアの代替になるだろう。
著者
奥田 順也
出版者
教育実践学会
雑誌
教育実践学研究 (ISSN:18802621)
巻号頁・発行日
vol.22, pp.1-21, 2019 (Released:2021-04-30)

現在,日本の小学校低学年の音楽科の器楽の学習では,鍵盤ハーモニカを扱うことが主流となっている。音楽の教科書や鍵盤ハーモニカに関する文献,先行研究を見ると,この楽器の演奏技能の1つである「タンギング」を小学校低学年に指導する捉え方を,「必要がある」と「必要がない」の2つに大きく分けることができる。しかし,奥田(2017)がこれらを分析したところ,この演奏技能の是非を問う記述は,低学年の子供が行った演奏などから得られたデータをもとに検証したようなものではなかった。 そこで本研究では,小学校低学年の鍵盤ハーモニカのタンギングの指導に関する基礎研究の1つとして,小学校2年生の子供たちの演奏を事例とした「息の流れ」を観点とする調査を行い,その結果を分類することで大きく3つのタイプを見出した。そして,タンギングを習得する前に「一息で吹く演奏」を定着させる,息の流れを優先するスモールステップによる段階的な指導を行うことを提案した。
著者
工藤 亘
出版者
教育実践学会
雑誌
教育実践学研究 (ISSN:18802621)
巻号頁・発行日
vol.21, pp.121-128, 2018 (Released:2021-04-30)

小学生がなりたい職業(2009年-2016年)は大きな変化がないこと、中学生がなりたい職業(2009年~2017年)は、男女とも情報通信技術に係わる職業に人気が移行しつつあることがわった。高校生がなりたい職業(2009年-2017年)は、男女の共通点として専門職や技術職に就きたい傾向が高く、情報通信技術に係わる職業に関心が高まってきている。大学生がなりたい職業(2014年)では、ヒューマンサービ、ス業、専門職・技術職、情報関連業、金融業に大別することができ、就職を希望する企業(2017年)では、大手の金融業や航空業・商社が上位を占めていることがわかった。社会のニーズや文明の発展に伴い、児童・生徒・学生がなりたい職業は数年で変化することが予想できるため、教師は児童・生徒・学生の職業観やなりたい職業を敏感に察知しながら発達段階に応じたキャリア教育をする必要がある。
著者
小倉 祐一
出版者
教育実践学会
雑誌
教育実践学研究 (ISSN:18802621)
巻号頁・発行日
vol.5, pp.53-67, 2001 (Released:2021-04-30)

本稿は,茨城県常総地方(県西地域の旧結城郡・旧真壁郡)に於いて「学び方教育」を推進した稲川三郎と「綴方教育」の実践家である増田実について, その人物の概略の紹介と国語教育を中心とした授業諭などについて考察したものである。主に稲川の著書『第三の授業』と増田の著書『宿題のない学校』について論じたものである。稲川は, 国語教育における読解指導について主体的な読みを追求し, 子供が自ら学ぶ授業を「第三の授業」 と定義した。「第三の授業」は学習の過程を大切にする授業であり,稲川は,そこに人間性の育成も展望しているのである。増田は, 綴方教育に留まらず, 聴き方教育や読み方教育等の国語教育全般における貴重な実践があるが, 校長として「宿題のない学校」 というリベラルな学校運営を推進したように,優れた指導力や時代の先を見る卓越した教育観を持っていた。彼らの実践は,現在の教育現場にも多くの示唆を与えるものである。
著者
長久 真理子 山口 豊一
出版者
教育実践学会
雑誌
教育実践学研究 (ISSN:18802621)
巻号頁・発行日
vol.24, pp.51-60, 2021

本稿は,被援助志向性研究の動向を概観し,これらの研究の課題を論じることによって被援助志向性の研究を展望し,研究・実践上の課題を示すことを目的とする。厚生労働省(2020)が2020年3月から5月に行った調査では,コロナ禍で抑うつ状態になる学生,人間関係に不安を感じている学生が増えている。また,文部科学省(2020)が行った「令和元年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果」では,いじめの認知件数が過去最多を更新した。このような状況を鑑みると,子ども達への支援の充実は喫緊の課題であると考えられる。子どもの身近な援助者には,養育者,友人,教師,心理教育的援助サービスを提供する専門家などがいる。子ども達が様々な援助者に援助を求めるかどうかという被援助志向性を知ることは重要である。そこで,本稿では,日本で発表された被援助志向性の研究動向を小学生,中学生,高校生と対象ごとに分類し展望した。