著者
矢吹 淳 小出 和欣 小出 由紀子 浅枝 英希
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.19, no.4, pp.135-140, 2010-12-31 (Released:2012-02-07)
参考文献数
27

10歳8カ月,雌の柴犬が他院にて赤血球増加症と肝臓内腫瘤を指摘され,精査と治療のため紹介来院した。血液検査,超音波検査,X線CT検査より赤血球増加症と肝臓外側右葉に限局した腫瘤を確認し,手術にて外側右葉の完全肝葉切除を実施した。病理組織学的検査において腫瘤は血管肉腫であり,術後10日からドキソルビシン(30 mg/m2 IV)を3週間毎に計6回投与した。なお術前に認められていた赤血球増加症は術後速やかに改善した。現在術後4年経過するが良好に推移している。
著者
矢部 摩耶 小出 和欣 小出 由紀子
出版者
日本獸医師会
雑誌
日本獣医師会雑誌 (ISSN:04466454)
巻号頁・発行日
vol.68, no.2, pp.117-123, 2015

当院で胆石を認め外科的に胆囊を摘出した犬50症例の回顧的研究を実施した.大部分が中高齢犬であったが,10%は1歳未満であった.胆石の含有成分は炭酸カルシウムが最多で,その他ビリルビンカルシウム,タンパク,脂肪酸カルシウム,リン酸カルシウム及びコレステロールを認めた.胆汁細菌培養の陽性率は31%であった.病理組織検査も含め全症例で何らかの基礎疾患あるいは合併症を認めた.術後死亡率は全体の10%であり,無症状の13例,肝外胆管閉塞(EHBO)のない34例及びEHBO併発の16例ではそれぞれ0%,3%及び25%で,EHBOの併発は術後死亡率を高める要因の一つと考えられた.3割以上の症例で認めたEHBOや胆石に続発すると思われる胆囊炎及び胆囊破裂の発症リスクを考慮すると,無症状の胆石症例においても外科的治療は選択肢として考えるべきであり,少なくとも基礎疾患の精査は必要と思われた.
著者
矢吹 淳 小出 和欣 小出 由紀子
出版者
動物臨床医学会
雑誌
動物臨床医学 (ISSN:13446991)
巻号頁・発行日
vol.20, no.1, pp.25-29, 2011-03-20 (Released:2012-04-04)
参考文献数
12

10歳齢のゴールデン・レトリバーが3日前からの食欲低下,嘔吐および白色の下痢を主訴に来院し,各種検査の結果,総胆管閉塞が疑われた。入院にて3日間の内科的治療を行ったが,改善が認められず,CT検査後に外科的治療を行った。CT検査では胆嚢頸部に結石を認めた。開腹手術にて胆石を摘出し,胆嚢切除を行ったが,大十二指腸乳頭部に炎症ならびに狭窄が認められたため,総胆管ステント留置術を実施した。術後,速やかに黄疸は改善され,術後32日目に内視鏡検査を行い,鏡視下にてステントを抜去した。ステント抜去後の経過も良好で,術後1261日に別疾患で死亡するまで閉塞性黄疸の再発は認められなかった。本症例より,総胆管ステント留置術は,短期的な胆汁流出路の確保が必要な症例に対して有用である可能性が示唆された。