著者
荒木 修 藤森 泰宏 小南 八崇仁 碇 公明
出版者
日本衛生動物学会
雑誌
日本衛生動物学会全国大会要旨抄録集 第58回日本衛生動物学会大会
巻号頁・発行日
pp.2, 2006 (Released:2006-06-07)

蚊の誘引捕獲機の開発に当たり誘引剤などの検討を行ったので,それについて報告する。誘引物として,炭酸ガス,熱,匂い,光などを検討した。この検討のための試験は屋内外で行った。さらに,赤外線カメラを用いて蚊の飛翔行動を観察した。 現在,蚊の捕獲機として入手できるのは,わが国ではCDCトラップさらにはアメリカンバイオフィジックス社が出すモスキートマグネット(MM)である。米国においてはMMに類似した商品が数多くが販売されており,それらはyahoo.comやamazon.comなどインターネット販売でも取扱われており,その入手は容易である。 これら捕獲機の主なる蚊の誘引源は炭酸ガスで,CDCトラップではドライアイスを昇華し,その他のトラップのほとんどはプロパンガスを燃焼させている。さらなる誘引源としてオクテノールや熱を併用するもの,音を利用するものもある。我々は使用の安全性を考慮し,炭酸ガスをその液体をボンベから気化させ放出することで蚊を誘引し,微小な光を用いて誘引された蚊を吸引方向へ誘導する方法を採用した。 誘引手段を検討するために室内において,我々は長さ5m,内径10cmの直管を使い,その中央から蚊を放ち,管の両端に設置した誘引物のどちらを蚊が選択するのかを調べた。これには発生飼育させた羽化後7日のメス蚊のヒトスジシマカ,アカイエカ,コガタアカイエカ,チカイエカをそれぞれ用いた。誘引物は紫外線源としてブラックライト,紫外線LEDを,熱源に表面温度41℃の携帯カイロを,匂い物質にオクテノール,L-乳酸を用いた。 その結果,誘引物が無い側よりも有る方へ蚊は移動した。4ヶの紫外線LEDは6Wブラックライトと同等の誘引を示した。オクテノールとL-乳酸の効果にはあまり差が無かった。当機は,フロリダ農工大学が行う捕獲機試験で,MMリバティの4倍の蚊を捕獲した。