著者
小坂 守孝
出版者
北翔大学
雑誌
北方圏生活福祉研究所年報 (ISSN:1342761X)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.33-42, 2007

大学生の退学防止や就学継続のためには,大学生が体験するストレッサーの把握が重要である。ここ10年あまりの間に大学生に普及したインターネット・携帯電話によるコミュニケーションについては多くの研究者が問題点を指摘している。しかし,それらのストレッサーとしての位置づけについては十分検討されていない。また,従来のストレッサー尺度にも反映されていない可能性が高い。本研究では,大学生におけるインターネット・携帯電話関連のストレッサー尺度が開発され,個人特性(ハーディネス)とストレス反応との関係が検証された。2つの大学に所属する大学生234名(男性50名,女性184名)からデータが収集された。新たに開発されたストレッサー尺度の因子分析により4つの因子(ネットコミュニケーション,匿名ストレス,情報漏洩,経済的圧迫)が抽出された。ストレッサーの合計得点そして4因子を反映したその下位尺度得点は,ストレス反応の合計得点や下位尺度得点とは弱い正の相関を示した。一方,個人の性格のたくましさを示すハーディネスとは一部の弱い相関を除きほとんどがほぼ無相関であった。分散分析においては,身体的反応に対するストレッサーの主効果と,ストレス反応の合計得点・全ての下位尺度に対するハーディネスの主効果のみが見られた。ハーディネスの3つの要素(コミットメント・コントロール・チャレンジ)が全て高い群と全て低い群におけるストレッサー合計得点の高/低群ごとのストレス反応得点を比較した結果,高ストレス下においてハーディネスの高い群は低い群よりもストレス反応の下位尺度である身体的反応は低いものであった。ストレッサー尺度に関して,今後の尺度の改良の可能性や従来の総合的なストレッサー尺度との関連性などについて討論された。