著者
山田 眞知子
出版者
北翔大学
雑誌
北方圏生活福祉研究所年報 (ISSN:1342761X)
巻号頁・発行日
vol.12, pp.39-46, 2006

日本の自殺者数は8年連続で3万人を超えている。自殺防止事業はこれまで殆ど民間任せであったが,政府も2006年にようやく自殺対策基本法を制定し自殺防止に取り組む姿勢を見せ,すでに取り組みを開始した自治体もある。フィンランドは1980年代後半ハンガリーに次いで自殺率が高かったが,1987年に国の主導で自殺予防プロジェクトを立ち上げ,自治体が中心に実施し,10年かけて自殺を減少させた。本稿では,日本ではまた知られていないフィンランドの自殺予防プロジェクトの内容,実施方法と成果を国と自治体の連携のあり方を中心に検討し,これからの日本の自殺対策の施策を模索する上で何を学ぶことができるか考えていく。
著者
小坂 守孝
出版者
北翔大学
雑誌
北方圏生活福祉研究所年報 (ISSN:1342761X)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.33-42, 2007

大学生の退学防止や就学継続のためには,大学生が体験するストレッサーの把握が重要である。ここ10年あまりの間に大学生に普及したインターネット・携帯電話によるコミュニケーションについては多くの研究者が問題点を指摘している。しかし,それらのストレッサーとしての位置づけについては十分検討されていない。また,従来のストレッサー尺度にも反映されていない可能性が高い。本研究では,大学生におけるインターネット・携帯電話関連のストレッサー尺度が開発され,個人特性(ハーディネス)とストレス反応との関係が検証された。2つの大学に所属する大学生234名(男性50名,女性184名)からデータが収集された。新たに開発されたストレッサー尺度の因子分析により4つの因子(ネットコミュニケーション,匿名ストレス,情報漏洩,経済的圧迫)が抽出された。ストレッサーの合計得点そして4因子を反映したその下位尺度得点は,ストレス反応の合計得点や下位尺度得点とは弱い正の相関を示した。一方,個人の性格のたくましさを示すハーディネスとは一部の弱い相関を除きほとんどがほぼ無相関であった。分散分析においては,身体的反応に対するストレッサーの主効果と,ストレス反応の合計得点・全ての下位尺度に対するハーディネスの主効果のみが見られた。ハーディネスの3つの要素(コミットメント・コントロール・チャレンジ)が全て高い群と全て低い群におけるストレッサー合計得点の高/低群ごとのストレス反応得点を比較した結果,高ストレス下においてハーディネスの高い群は低い群よりもストレス反応の下位尺度である身体的反応は低いものであった。ストレッサー尺度に関して,今後の尺度の改良の可能性や従来の総合的なストレッサー尺度との関連性などについて討論された。
著者
佐藤 至英 戸澤 希美
出版者
北翔大学
雑誌
北方圏生活福祉研究所年報 (ISSN:1342761X)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.39-45, 2003-10-01
被引用文献数
3

本研究は,予備調査で得られた原尺度をもとに,独居高齢者が日常生活において,どのようなストレスをかかえているのか,身体的健康,精神的健康,サポート,生きがい,経済的満足度と独居高齢者の日常生活におけるストレスはどのような関係にあるのかについて検討することを目的とした。対象者は北海道N市ならびにM市に在住する65歳以上の独居高齢者85名(男性16名,女性69名)。因子分析の結果,独居高齢者のストレスとして,老いへの不安(高齢ストレス),一人で生きていくことへの不安(自律ストレス),家族も含めた対人関係(対人ストレス),そして身体的不調(病気ストレス)の4タイプが抽出された。4タイプのストレスと各要因との関係を分析した結果,(1)身体的にも精神的にも健康を保ち,趣味などの生きがいをもつ人は,老いへの不安や一人で生きていくことへの不安が低い,趣味などの生きがいをもち,家族からのかかわりに満足を覚え,経済的満足度が高い人ほど精神的健康が保たれていること,(2)対人関係や体調不良等によるストレスは,家族も含めたまわりの人からのサポートによって,その程度は変化すること,(3)対人関係と老いへの不安がストレスとなり精神的健康に影響を及ぼしていることが明らかとなった。
著者
高岡 朋子 大信田 静子 北村 悦子 泉山 幸代 辻 美恵子 富田 玲子 永田 志津子 福山 和子
出版者
北翔大学
雑誌
北方圏生活福祉研究所年報 (ISSN:1342761X)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.47-57, 2003-10-01

北国に住む高齢者の衣生活の質の向上を目指し,衣生活の実態と意識を調査した。道内主要都市6ヵ所に在住する65歳以上の健康な男女132名を対象に,生活の満足度,冬服の着用実態,被服行動の意識等の質問項目を面接形式で実施した。成果:被験者の90%以上が生活に満足し,自分の趣味や老人仲間との交友に生きがいを感じていた。冬服の着用実態として,男性は下着が長袖シャツにブリーフと長丈パンツを着用し,女性はシャツに五分丈パンツや七分丈パンツを着用し,男女ともに保温性を確保していた。室内の上着では男女ともにセーターとズボンスタイルが7割以上をしめていた。また男性の普段着として着用したい服種は,セーターとズボンで外出着としてはスーツまたは,サファリー風ジャケットとズボンの組み合わせであった。女性は普段着としてパンツを選んでいるが,外出着には8割以上がスカートを選んでいた。次に被服行動の意識調査結果から,「着やすく,動きやすく,素材は柔らかいもの」に高い評価があり,肩に負担がかからない着装を好んでいることが分かった。被服行動の因子分析結果では「おしゃれ性」「素材性」「機能性」「着装の好み」「ゆとり性」の5因子が抽出された。さらに被験者の年齢を高低に分け因子得点の平均値を求めた結果,71歳未満の低年齢層は素材を重視し,72歳以上の高年齢層は機能性と着装の嗜好が高い傾向にあり,男女別の因子得点平均値からは女性のほうがおしゃれ性が高く,素材へのこだわりが高い傾向にあることが分かった。マズローの欲求階層理論を応用しての質問からは,生理的欲求と所属の欲求の被服行動が高く,安全性の欲求と自己実現の欲求は低く現れた。
著者
相内 真子
出版者
北海道浅井学園大学人間福祉学部北方圏生活福祉研究所
雑誌
北方圏生活福祉研究所年報 (ISSN:1342761X)
巻号頁・発行日
vol.7, pp.97-106, 2001

クリントン路線の継続か,政権交代か。2000年11月に行われたアメリカ合衆国大統領選挙は,国内のみならず国際的にも多くの関心を集めた。投票用紙の不備と開票作業のトラブルに端を発した選挙結果の混乱は,実に35日間にわたってアメリカの次期大統領が決定しないという異例の事態を招いた。新大統領の決定は法廷の場に持ち込まれ,最終的な裁定を下したのは連邦最高裁判所である。これによって,「選挙人の獲得数で、勝ったものの, 得票数で負けた」史上3人目の大統領が誕生した。35日間にわたる党派的抗争とその結末は,国家のリーダーの選出に関わる様々な疑問をアメリカ市民と国際社会に投げかけた。The presidential election of the United States of America drew both national and internationalattention inNovember, 2000. The fallacious ballot form in one county and the incomplete vote count in another county in the Stateof Florida triggered a lengthy thirty-fiveday dispute over who would be the next president of the United States.Finally the US Supreme Court made a judgment, only to help legitimize a president who failed to win the popular vote.The process of the dispute, and its result, have posed a fundamental question to American citizens , as well as tointernational society, of how to decide who is to be a national leader.
著者
白石 淳
出版者
北翔大学
雑誌
北方圏生活福祉研究所年報 (ISSN:1342761X)
巻号頁・発行日
vol.9, pp.7-21, 2003-10-01

この調査研究の目的は,身体障害のある生徒が高校へ入学できない原因を,初等教育学校・前期中等教育学校の学校生活の分析から,明らかにすることである。身体障害のある生徒は,高校への入学の希望を持っているが,実際に高校へ入学することは少ない。この原因は,生徒本人にあるのではなく,学校施設や教員の身体障害に対する理解不足などの生徒本人を取り巻く環境にある。すなわち,身体障害のある生徒が持つ入学に対する否定的な意識は,その高校入学前における学校生活に関わる環境から生成されているものと考えられる。その意識は高校への入学を困難にするなど,その後の学校生活における将来展望に影響を与えている。このように,高校の入学の問題は,小学校や中学校の学校生活から大きな影響を受けている。
著者
佐藤 至英
出版者
北翔大学
雑誌
北方圏生活福祉研究所年報 (ISSN:1342761X)
巻号頁・発行日
vol.13, pp.67-69, 2007

フィンランドにおけるホームレス政策は,比較的成功している事例として世界的に注目されている。1987年18,000人近くいた単身ホームレスや1,400世帯のホームレス世帯は,1996年には単身ホームレスが44%,ホームレス世帯は74%減少している。2006年現在,フィンランドにおけるホームレス人口は,単身ホームレス7,400人,ホームレス家族300。フィンランドのホームレス対策において中心的役割を担っているNPO(Y財団)のハンヌ・プットネン代表からホームレス支援活動(永住のための住宅供給)の実態について,またヘルシンキ郊外にあるケアクリニックのジルキ・ラウスバアラ所長ならびに長期入所している元ホームレスの男性2人からリハビリテーション・プログラムの実際について,インタビューした。