著者
小坂 義弘
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.30, no.1, pp.169-174, 2010-01-15 (Released:2010-02-19)
参考文献数
1

硬膜外麻酔を安全・確実に施行する秘訣は, 施行時の注意点をよく守り, 確実に硬膜外腔に針先やカテーテルを挿入して, 局所麻酔薬の適当量を上手に注入することである. その後は, 患者のそばを離れず, しばらくの間, 患者の呼吸・循環の監視を怠らないことである. 懸滴法以外の硬膜外腔確認方法では, 信頼性が低いと思って対応すべきで, 外来でのブロックでは特に注意が必要である. 全身麻酔に併用する場合には, 意識下に硬膜外腔穿刺を行って, カテーテルを挿入し, 2~3mlのテストドーズを投与して, 脊髄くも膜下麻酔になっていないことを確認して導入する. カテーテルを挿入したけれど, テストもしないで全身麻酔を始めた場合には, くも膜下腔にカテーテルが挿入されているかもしれないと思って管理すべきである.
著者
小坂 義弘
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.40, no.3, pp.293-300, 2020-05-15 (Released:2020-06-26)
参考文献数
8

今日まで順調な発展を遂げてきた硬膜外麻酔において,最近は合併症が多く,医療事故も麻酔科関係の半数を占めている.全国の大学病院麻酔科にアンケート調査をしたところ,硬膜外腔の確認を確実にできるhanging drop法のできる金属針が放逐され,hanging drop法のできないディスポーザブル針に変わり,硬膜外腔の確認法が硬膜誤穿刺等の危険のあるloss of resistance法になっていた.このため研修医に硬膜外腔穿刺をさせない大学が1/3もあり,硬膜外麻酔が危機にさらされている.現代では硬膜外麻酔は必須の鎮痛・麻酔法であり,その進歩を粗雑な針で後退させてはいけない.合併症の原因が,医師の技量よりも針に問題があるのなら,安全・確実にhanging drop法のできる良いディスポーザブル針を作る以外に良策はない.