著者
安永 美保 中村 祐美 小坂部 悟美
出版者
京都
雑誌
同志社女子大学大学院文学研究科紀要 = Papers in Language, Literature, and Culture of the Graduate School of Doshisha Women's College of Liberal Arts (ISSN:18849296)
巻号頁・発行日
no.13, pp.53-70, 2013-03

『河海抄』は貞観元年 (1362年) 頃に四辻善成によって作られた『源氏物語』の注釈書であり、源氏学初期の集大成で、以後の注釈の規範的位置を示すものである。『河海抄』執筆の基本的姿勢は『源氏物語』を歴史の中に置き、いかにその文章や構想が歴史的事実に依拠したものであるかを詳細に説明している。特に、本報告で扱った「料簡」はその性格が強く、「いづれの御時にか」で繙かれる『源氏物語』の虚構世界を「醍醐・朱雀・村上天皇」の三代の御代に設定し、主人公光源氏の解釈も実在の歴史上の人物に依ることで、新たな『源氏物語』の読みを展開している。こういった視点は原典をより深く読むための手掛かりとなる。 そこで、本稿では同志社女子大学図書館蔵本を底本として、演習に参加した大学院生を中心に『河海抄』の翻刻と注釈を行った。今回の報告ではその中の「序」と「料簡」を掲載する。