- 著者
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小山 光一
- 出版者
- 北海道大学大学院経済学研究科
- 雑誌
- 經濟學研究 (ISSN:04516265)
- 巻号頁・発行日
- vol.54, no.4, pp.47-66, 2005-03-10
本稿は、わが国の財政赤字の構造を制度分析の観点から検討している。公債の累積を財政制度の欠陥として捉え、財政制度として国債の償還制度、財政政策、財政投融資、地方財政、社会保障(公的年金と医療)、および税制を取り上げる。各制度がどのような制度の欠陥をもち、それが財政赤字をどのように拡大させているのかを検討する。現実の制度の下で各経済主体は合理的な行動を行い、その結果として「制度の下での均衡」が生じる。制度の欠陥により、「制度の下での均衡」が非常に不安定な均衡になり、この結果、歳出が拡大するとともに税収が異常に低い状態になって、財政赤字が拡大していることを示す。さらに、公債累積の影響として財政破綻の可能性と公債の負担を論じる。公債が累積した結果、わが国は財政破綻の危機に直面しているとともに、累積した公債を償還していく過程で国民の負担は著しく高くなる。例えば、景気が回復しないで金利が上昇すれば、巨額の公債に対する利払い費は急激に上昇するので、財政は破綻の危機に直面し、これを回避するため国民の税負担は著しく高くなる。今後、財政破綻を回避しながら、どのように累積した公債を減少させていくかを検討している。