著者
田中 一晶 小山 直毅 小川 浩平 石黒 浩
雑誌
情報処理学会論文誌 (ISSN:18827764)
巻号頁・発行日
vol.59, no.2, pp.622-632, 2018-02-15

人とインタラクションを行うロボットの感情表現は,感情状態をそのまま表現するか,感情状態とは無関係に社会性を表現するか,いずれかの方針で設計されている場合が多い.本研究では,これらの感情表現を情動的表現,社会的表現と定義し,新たに両方を組み合わせた感情表現手法を提案した.人が愛想笑いを行うとき,目元の表情には感情が不随意に表れるが,口元の表情を随意に変化させて微笑むといわれている.この知見に基づいて,提案手法では,目元は情動的表現によって,口元は社会的表現によって表情を決定する.人との対話実験において,提案手法を実装したロボットと一方の感情表現しか行わないロボットとを比較した結果,提案手法は人間らしい印象と社会的な印象の両方において高い評価が得られる可能性が示唆された.さらに,親密さの評価として,友だちになりたいなど,強い社会的結合を必要としない項目の評価では社会的表現が有効に働くが,一緒に生活したいなど,より強い社会的結合を必要とする項目の評価では,情動的表現も必要であることが示唆された.