著者
小山 知秀
出版者
日本腹部救急医学会
雑誌
日本腹部救急医学会雑誌 (ISSN:13402242)
巻号頁・発行日
vol.43, no.4, pp.723-727, 2023-05-31 (Released:2023-11-30)
参考文献数
48

腹部コンパートメント症候群(abdominal compartment syndrome:以下,ACS)は致命的な病態である。一般に,ACSの内科的治療を行っても腹腔内圧が下がらずに26mmHg以上のGrade Ⅳ状態かつ臓器障害を認める場合は,内科的治療の限界であるため外科的治療つまりopen abdomen management(以下,OAM)を行うことになる。しかし,一旦OAMとなった後の根治的閉腹に至るまでの経過は画一的なものではなく,各局面で治療方針の判断を下すにあたって常に理想と現実の狭間で悩まされることになる。
著者
杉井 将崇 柄澤 智史 大戸 弘人 福田 伸樹 藤森 大輔 伊藤 史生 小山 知秀 高橋 功
出版者
一般社団法人 日本外傷学会
雑誌
日本外傷学会雑誌 (ISSN:13406264)
巻号頁・発行日
pp.38.1_04, (Released:2023-12-15)
参考文献数
10

甲状腺腫瘍の既往がある85歳男性が高所墜落後に救急搬送された. 来院時吸気性喘鳴と頚部腫脹を認め呼吸困難を訴えたため, 気道確保目的に緊急気管挿管を行った. CT所見と病歴から甲状腺腫瘍破裂と診断した. 気道狭窄を伴う血腫拡大のため手術適応と判断し, 血腫除去後に甲状腺左葉摘出術・気管切開術を施行した. 第2病日に人工呼吸管理を離脱, 第28病日に独歩退院した. 鈍的外傷による甲状腺損傷は稀だが, 気道閉塞の場合に致死的となる. 手術は止血だけでなく血腫除去も行えるが, 腫瘍出血に対しては甲状腺摘出を要する場合がある. 手術後も気道狭窄が残存する場合, 気管切開を行うことで早期人工呼吸離脱やリハビリテーションが可能となる.