著者
小山内 孝夫
出版者
社会経済史学会
雑誌
社会経済史学 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.59-72, 2014

本稿は,デンマーク王室がエーアスン海峡を航行する船に課した税の記録を刊行した『エーアスン海峡通行税台帳』(STT)を用いて,イングランドのバルト海貿易におけるハル,ヨークシャの重要性を,16世紀後半と17世紀前半について明らかにする試みである。まず,船舶数の分析により,ハルがイングランド中第3位の船舶数をバルト海に送り込んだ有力港であったことを示す。貿易の分析では,ハル船が毛織物輸出,亜麻・鉄輸入において,イングランド内のみならず,全ヨーロッパ的にみても重要な存在であったことを実証し,これとハルの後背地の経済活動(ヨークシャ毛織物工業など)との関連を提起する。本稿の分析は,地域史的・国民経済史観的枠組みのもとで把握されがちであったヨークシャ経済に対する海外市場の重要性を提起し,同地域を北ヨーロッパ商業圏の一環として見直すよう迫るものである。また,ヨークシャがロンドンを介することなく,ハルを通して北ヨーロッパと結びつき,「ロンドンを頂点とするイングランド国民経済」とは別個に,ある程度自立的な経済圏を形成していた可能性も論じる。
著者
小山内 孝夫
出版者
社会経済史学会
雑誌
社会経済史学 (ISSN:00380113)
巻号頁・発行日
vol.80, no.1, pp.59-72, 2014-05-25 (Released:2017-06-03)

本稿は,デンマーク王室がエーアスン海峡を航行する船に課した税の記録を刊行した『エーアスン海峡通行税台帳』(STT)を用いて,イングランドのバルト海貿易におけるハル,ヨークシャの重要性を,16世紀後半と17世紀前半について明らかにする試みである。まず,船舶数の分析により,ハルがイングランド中第3位の船舶数をバルト海に送り込んだ有力港であったことを示す。貿易の分析では,ハル船が毛織物輸出,亜麻・鉄輸入において,イングランド内のみならず,全ヨーロッパ的にみても重要な存在であったことを実証し,これとハルの後背地の経済活動(ヨークシャ毛織物工業など)との関連を提起する。本稿の分析は,地域史的・国民経済史観的枠組みのもとで把握されがちであったヨークシャ経済に対する海外市場の重要性を提起し,同地域を北ヨーロッパ商業圏の一環として見直すよう迫るものである。また,ヨークシャがロンドンを介することなく,ハルを通して北ヨーロッパと結びつき,「ロンドンを頂点とするイングランド国民経済」とは別個に,ある程度自立的な経済圏を形成していた可能性も論じる。