著者
小島 裕也 大矢 勝
出版者
一般社団法人 日本繊維製品消費科学会
雑誌
繊維製品消費科学 (ISSN:00372072)
巻号頁・発行日
vol.54, no.9, pp.838-845, 2013-09-20 (Released:2017-09-14)
参考文献数
11

中国における消費者情報の動向を探るため,中国の美容・化粧品関連書籍の有害性記述表現について分析した.書籍中の有害性に関する記述表現を抽出し,有害性得点を指標として,書籍中の有害性表現を評価した.その際に得点の個人差を抑えるために「基準スケール」の作成を試み,これをもとに書籍の評価を行った.今回,5段階の整数で得点化する場合(整数評価)と小数点第一位まで得点化する場合(小数点評価),の2種の方法で評価を行った.調査の結果,整数評価と小数点評価では,同様の得点傾向を示したが,小数点評価のほうが正確な値が得られた.よって,小数点評価を書籍の有害性得点の結果として用いることにした.また抽出した全文章のうち8割以上の記述が有害性を強調する表現であった.界面活性剤について,書籍中では「皮膚の内部に浸透し,人体に危害を加える」といった表現や「ガンを引き起こす可能性がある」といった表現など,科学的な根拠の薄い情報によって有害性が強調されているものが見られた.以上から,中国における美容・化粧品関連書籍中の記述には科学的な根拠なく有害性を強調する表現が多く含まれていることが明らかとなった.