著者
小嶋 良一
出版者
関西大学文化交渉学教育研究拠点(ICIS)
雑誌
周縁の文化交渉学シリーズ5 『船の文化からみた東アジア諸国の位相―近世期の琉球を中心とした地域間比較を通じて―』
巻号頁・発行日
pp.103-121, 2012-01-31

主に江戸初期から幕末にかけての日本の海運や造船にスポットをあて、これまでの研究成果をもとに、それらの特徴について考察する。 江戸初期、朱印船貿易など海外との活発な交易が展開され、洋式船や中国式の船(ジャンク)も建造された。しかし、鎖国政策がとられて後、一般商船は外洋航海の必要が無くなり、それらの形式の船はほとんど建造されなくなった。その結果、内航海運に適した日本独特の(一般に千石船と呼ばれる)弁才船や、様々な川船等が建造されるようになった。これらは、日本の沿岸航路の整備とも相俟って、海運の隆盛をもたらし、江戸期の重要な経済インフラを構成した。特に弁才船は当時を代表する木造船で、千石積み級の船も普及し一度に大量の物資を輸送できた。本論文では弁才船の船体構造や材料についての特徴について述べるとともに、東アジアとの技術上の関連性にも言及する。また、和船にまつわる儀礼や意匠など、その文化的な一面についてもふれる。