著者
田中 雅夫 柳 雄介 小川 向洋 水元 一博
出版者
九州大学
雑誌
萌芽的研究
巻号頁・発行日
1997

我々は予後が極めて不良な膵癌に対する免疫遺伝子治療に取り組んでおり、これまでに以下の成果をあげた。(1)in vitroにおけるサイトカイン発現の確認:ハムスター膵癌細胞に各組換えウイルス(IFN-γ、GM-CSF,MCP-1)をMOI 0、10、50、100の感染効率で感染させ毎日、7日後まで上清を採集、ELISAにてサイトカインの放出量を測定した、各サイトカインはMOI依存性に腫瘍細胞より放出され、3目目に最高レベルで放出され1週間後には極少量となった。(2)放出されるサイトカインの生物学的測定:IFN-γはvesicular stomatitis virus plaque inhibition assay, GM-CSFはマウス骨髄細胞を用いたcolony forming assay,MCP-1に対してはTHP-1 細胞(human monocyte)を用いた。chemotaxis assayにより測定した。放出された各サイトカインは生物学的活性をもつことが証明された。(3)in vitroにおける腫瘍増殖:24穴プレートの各wellに2x10^3個の細胞をまき2日後にウイルスをMOI0,10,50,100で感染させ細胞数を各群3穴ずつ、24時間おきに4日後まで計測した。IFN-γのみ腫瘍増殖をMOI依存性に抑制した。(4)in vivoにおける腫瘍増殖:6穴プレートに各ウェル1x105の腫瘍細胞をまき2日後にウイルスをMOI 100の感染効率で感染させ2時間後に100Gyのγ線照射を行い、その翌日ハムスターに腫瘍ワクチンとし1x10^6個の細胞を皮下に注入(n=10)、7日後に1x10^5個のγ線照射を行っていない腫瘍細胞を皮下にチャレンジした。腫瘍ワクチンの実験系においては、GM-CSFが1ヶ月後に95%の抗腫瘍効果を及ぼした。MCP-1及びIFN-γは効果が認められなかった。皮下移植腫瘍にてGM-CSFに抗腫瘍効果が認められたので、in vivoでの肝転移に対する効果についてGM-CSF遺伝子組換えウイルスを用いて現在検討中である。