著者
小川 家資
出版者
帝京科学大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2003

本研究は、職場におけるペットの導入が作業者のストレス解消や緩和にどの程度貢献できるかについてオフィスを見立てた実験室での実験と実際の職場での実験から検証した。(1)オフィスを見立てた実験室での実験では、作業効率(作業パフォーマンス)、生理変化(心拍数、脳波)、心理変化(気分プロフィール検査)、人の行動解析を用いてペット以外の条件と比較して検証した。課題とする作業は「単純データ入力作業」、「連続加算作業」、および「パズルゲームによる創造作業」の3水準、休憩は、「ペットと遊ぶ」、「ペット型ロボットと遊ぶ」、および「雑誌を見る」の3水準の計9条件で実験を実施した。実験は被験者2〜3名がオフィスを見立てた実験室で同じ課題作業10分を3回繰り返し、それらの作業間に休憩5分を同じ条件で2回実施した。本学の健康な学生12名(男子6名、女子6名)が被験者として参加した。結論として作業による効果の違いはあるがペットの介在は職場ストレス緩和に貢献できる可能性が示された。(2)実際の職場での実験では、休憩時に犬と触れ合うことによってどのような気分変化が生じるかを検証した。職場ストレスの指標として気分プロフィール検査を使用した。対象者は男性職員4名と女性職員4名であった。測定は出勤時、昼の休憩前後、退勤時の1日4回で対象者にはこの実験へ最低3日の参加をお願いした。この結果から休憩時に犬と触れ合うことは午前中の仕事によって下がった職員の生き生き感を出勤時以上の状態まで増加させ、思考力低下を抑える効果がみられた。以上の2つの実験から職場ストレス解消にはペット導入が作業者の作業効率、生理的な効果、心理的な変化にプラスの効果があることがわかった。しかしながら、現実問題として犬嫌いの人への対応と対象課題作業以外への効果がこれからさらに検討を加えるべき課題として指摘した。