著者
小川 恵子 並木 隆雄 関矢 信康 笠原 裕司 地野 充時 中崎 允人 永嶺 宏一 寺澤 捷年 秋葉 哲生
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.641-645, 2008 (Released:2009-01-15)
参考文献数
12
被引用文献数
1

我々は,短腸症候群を漢方治療で安定した状態に管理できた1例を経験した。症例は,74歳,女性。主訴は,重症下痢,腹満感,腹痛である。23歳で結核性腹膜炎と診断され,26歳時,腸閉塞により小腸・大腸部分切除術を受け,短腸症候群となった。60歳,漢方治療目的に,当院受診。茯苓四逆湯を投与したところ,腹痛・腹満・下痢ともに改善した。さらに,蜀椒を加味することにより,大建中湯の方意も併せ持つ方剤とした。茯苓四逆湯加蜀椒にて,経過を見ていたところ,64歳には,体重45kgと,術後初めて術前体重に戻った。短腸症候群は,予後の悪い疾患ではあるが,本症例は14年間漢方治療で安定した経過を得ることができた。