著者
岡 洋志 犬塚 央 永嶺 宏一 野上 達也 貝沼 茂三郎 木村 豪雄 三潴 忠道
出版者
The Japan Society for Oriental Medicine
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.56, no.6, pp.947-951, 2005-11-20 (Released:2010-03-12)
参考文献数
13
被引用文献数
3 1

黄耆桂枝五物湯は痺れや痛みに用いられる方剤であるが, 今回我々は同方を投与した29症例において, 有効例が18例で無効例が11例であった。有効群と無効群の自覚症状の違いを解析し, それらが処方決定の指標となると思われた。「寒がり」,「体全体が重い」はこれまでの報告にもみられた症候であり, 今回の検討でも強い傾向と特異性が見られた。さらに,「関節が痛む」,「皮膚が乾燥する」,「怒りっぽい」が無効群に比較して有効群に多く見られた。これらは今後, 黄耆桂枝五物湯を投与する上で特異性の高い使用目標となる可能性がある。
著者
韓 哲舜 平崎 能郎 岡本 英輝 植田 圭吾 八木 明男 島田 博文 王子 剛 永嶺 宏一 並木 隆雄
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.66, no.2, pp.112-118, 2015 (Released:2015-08-12)
参考文献数
17
被引用文献数
2 7

71歳女性。腰部脊柱管狭窄症の診断の下,長引く腰痛に対して神経・椎間板ブロックや投薬治療が行われていたが改善しないため,漢方治療目的に当科を受診した。身体所見では腰痛の他に頑固な便秘とこむら返り,間欠的な胸痛ならびに全身の強い冷えを認めた。また漢方的所見として強い瘀血と血虚を認めた。当帰四逆加呉茱萸生美湯エキスや通導散エキスにて加療するも改善が得られず入院加療となった。慢性的な瘀血と血虚に対して血府逐瘀湯加減,また間欠的な胸痛に対して烏頭赤石脂丸料をほぼ同時期に開始した所,冷えと腰痛の改善が得られた。本症例は慢性的な冷えと瘀血,血虚を改善する事で血行が促進されたため,冷えと腰痛の改善が得られた可能性が示唆された。
著者
小川 恵子 並木 隆雄 関矢 信康 笠原 裕司 地野 充時 中崎 允人 永嶺 宏一 寺澤 捷年 秋葉 哲生
出版者
一般社団法人 日本東洋医学会
雑誌
日本東洋医学雑誌 (ISSN:02874857)
巻号頁・発行日
vol.59, no.4, pp.641-645, 2008 (Released:2009-01-15)
参考文献数
12
被引用文献数
1

我々は,短腸症候群を漢方治療で安定した状態に管理できた1例を経験した。症例は,74歳,女性。主訴は,重症下痢,腹満感,腹痛である。23歳で結核性腹膜炎と診断され,26歳時,腸閉塞により小腸・大腸部分切除術を受け,短腸症候群となった。60歳,漢方治療目的に,当院受診。茯苓四逆湯を投与したところ,腹痛・腹満・下痢ともに改善した。さらに,蜀椒を加味することにより,大建中湯の方意も併せ持つ方剤とした。茯苓四逆湯加蜀椒にて,経過を見ていたところ,64歳には,体重45kgと,術後初めて術前体重に戻った。短腸症候群は,予後の悪い疾患ではあるが,本症例は14年間漢方治療で安定した経過を得ることができた。