- 著者
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小川 武人
畑野 可奈美
藤岡 慧大
藤原 千尋
山本 健一郎
望月 精一
- 出版者
- 公益社団法人 日本生体医工学会
- 雑誌
- 生体医工学 (ISSN:1347443X)
- 巻号頁・発行日
- vol.Annual56, no.Abstract, pp.S320, 2018 (Released:2018-09-14)
シングルニードル透析は、一本の穿刺針で脱血と返血を交互に繰り返す透析手法である。その圧力や流量特性は通常の透析と異なるため、体外循環時の溶血に影響する可能性がある。そこで本研究では、牛血液を用いて通常の透析(二本の穿刺針)とシングルニードル透析とで溶血率について比較した。 牛血液それぞれ1 L を37℃の恒温槽にて撹拌し、通常透析では血液流量を200 mL/minとし、シングルニードル透析においては脱血時の設定血流量を200 mL/minとした。透析液は流さず、透析器は37℃の恒温槽に浸した。また、ブランクとして牛血液1 Lを恒温槽にて撹拌した。溶血率は血漿中のヘモグロビンの吸光度から算出した。 測定の結果、ブランクにおいても溶血率の上昇がみられた。これは撹拌によるものであると考えられた。通常透析とシングルニードル透析でのポンプおよび血液回路での溶血の影響をみるため、透析時の溶血率からブランクの溶血率の分を補正した。その結果、通常透析と比較して、シングルニードル透析で有意差は見られなかった。血液透析における溶血は、主に脱血時の陰圧による影響が大きいため、違いは見られなかったものと考えられた。 以上から、牛血液を用いた実験において、シングルニードル透析における流量特性が溶血に及ぼす影響については、通常透析との明確な違いが見られなかった。