著者
小川 泰樹 角田 俊平
出版者
日本水産増殖学会
雑誌
水産増殖 (ISSN:03714217)
巻号頁・発行日
vol.36, no.2, pp.151-156, 1988-09-10 (Released:2010-03-09)
参考文献数
43

1986年5月6日から6月29日までの間, 研究室内でスジエビ (Palaemon paucidens) の雌雄の交尾前の行動と交尾行動, および雌の放卵行動を観察した。1) 本種の交尾行動は夕刻4時頃から夜9時頃までの間に行われることが多く, 交尾の約2時間前頃から雌雄の動きが活発になり, 雄が雌を追尾する。しかし雌雄が特定のペアを形成することはない。2) 雌が一時的に水槽底面に静止した際には, 雄が近付き, 腹部と尾部を底面からやや上方に持ち上げて全腹肢を激しく前後に振動させたり, 腹肢を“く”の字状に曲げたりする。3) 交尾が行われる直前に雌は脱皮をするが, 脱皮は1, 2秒間で終わる。この脱皮の間や, 脱皮中から脱皮直後までの間に雄が雌の腹部背面に乗るマウンティングが観察される。しかしこのマウンティングをしない雄もいるので, 交尾にとって雄のマウンティングは必ずしも必要条件ではない。4) 交尾行動には, 雌の体に対して水平 (十字状) に雄が巻きつく姿勢と, 雌雄が平行に並ぶようにして腹面を相接する姿勢の2通りがあり, 両者とも一瞬のうちに終わる。5) 放卵行動は夜7時または8時頃から始まり, 9時から11時頃まで断続的に行われる。この行動は雌が腹部を水槽底面に対して40~60°の角度で上方に持ち上げ, 全腹肢を数秒間激しく前後に振動させるもので, 数分から約10分間隔で数十回繰り返される。