- 著者
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小川 紘代
矢倉 千昭
木村 航汰
- 出版者
- 公益社団法人 日本理学療法士協会
- 雑誌
- 理学療法学Supplement Vol.44 Suppl. No.2 (第52回日本理学療法学術大会 抄録集)
- 巻号頁・発行日
- pp.1278, 2017 (Released:2017-04-24)
【はじめに,目的】バレエには“ポアント”という,つま先が床から離れた時には常にしなければならない重要な肢位がある。正しいポアントでは,足関節底屈,趾節間関節(以下IP関節)伸展,中足趾節関節(以下MP関節)屈曲となる。この動きはバレエ特有のものであり,バレエを長年習っていても,IP関節が屈曲してしまう人もいる。そこで本研究では,正しいポアントができる人の足部構造と機能の特性を明らかにし,指導方法の開発に生かすことを目的とする。【方法】対象はクラッシックまたはモダンバレエ歴6年以上の女性18名,平均年齢17.9±4.4歳であった。長座位となって両足でポアントをしてもらい,IP関節が伸展しているポアント群とIP関節が屈曲している非ポアント群に分けた。足部構造として,内側縦アーチをアーチ高率,横アーチを開張率で評価した。アーチ高率は足長に対する舟状骨高の割合,開張率は足長に対する足幅の割合で求めた。どちらも測定は自然立位とし,足長は踵骨後面から第1中足骨頭までの距離とし,足幅は第1中足骨頭と5中足骨頭を結ぶ線とした。足部機能として足趾圧迫力と足趾把持力を評価した。足趾圧迫力は自作のキットに等尺性筋力計μTas F-1(アニマ)を設置し,第2~4趾で押す力を測定した。足趾把持力は足指筋力測定器II(竹井機器)を用いて測定した。測定肢位は上肢を胸の前で組んだ端座位とした。左右2回ずつ測定し,最大値を体重で除した体重比で算出した。統計学的分析として,ポアント群と非ポアント群の比較は対応のないt検定を用い,さらに効果量d値を計算した。【結果】右足において,ポアント群は6名,非ポアント群は12名で,アーチ高率はポアント群23.1±3.9%,非ポアント群19.0±2.5%で有意差があった(p<0.05,d=1.34)。一方,左足では,ポアント群は5名,非ポアント群は13名で,足趾圧迫力はポアント群0.85±0.18N/kg,非ポアント群0.56±0.18N/kg(p<0.01,d=1.55),足趾把持力はポアント群0.54±0.11kg/kg,非ポアント群0.33±0.12kg/kg(p<0.01,d=1.70)で有意差があった。また,左のアーチ高率は,ポアント群23.7±3.6%,非ポアント群20.4±2.8%(p=0.055,d=1.09),開帳率はポアント群53.5±3.8%,非ポアント群50.3±2.8(p=0.071,d=1.02)で有意差はなかったが効果量は大きかった。【結論】両足ともにポアント群は非ポアント群に比べてアーチ高率が高く,左足のポアント群は非ポアント群に比べて足趾筋力が強かった。IP関節屈曲を防ぐには,内在性の足趾伸展筋群(虫様筋と骨間筋)を常に同調して働かせる必要がある。正しいポアントを行うためには内在性の足趾伸展筋群が働きやすい構造を持ち,さらに足底筋群の筋機能が高い必要があると考えられる。また,アーチ高率は足趾圧迫トレーニングによって増加するとの報告もあることから,今後はポアントができるための指導方法を開発し,検証していきたい。