著者
小川 義雄 佐田 利行 下山 伸幸
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.59, pp.1-5, 1992-12-21
被引用文献数
1

1.平成3年の台風9,17,19号による長崎県における水稲被害について,農林水産省長崎統計情報事務所,同長崎食糧事務所の資料と水稲奨励品種決定現地調査および作況試験成績によって実態解析を行った。2.平成3年7月29日,早期水稲の出穂〜成熟期間に台風9号が五島,壱岐,県北の早期水稲地帯沿岸を通過し,普通期水稲の出穂〜成熟期間の9月14日および9月27目に台風17号および19号が本県内陸に上陸した。3台風とも大型であり,台風9号は早期水稲に風雨による被害を及ぼし,台風17号,19号は普通期水稲に対して主として潮風による被害を及ぼした。3早期水稲は,生育初期の日照不足による生育不良があったが,これに加え台風9号の影響により品質・収量がかなり低下した。また台風襲来時に乳熟期であった五島地域で穂揃期以前の生育状況にあった壱岐および平戸地域に比べて品質の低下が大きかった。4普通期水稲は,台風17,19号により県下全域で大きな被害を受けた。被害は主として潮風害による品質低下および収量低下であった。その中でも中・晩生種作付地域である諌早平坦部を中心とした東南部地域で減収,品質の低下が大きかった。また,全体的には中・晩生品種が早生品種より被害が大きかった。5.台風被害の地域差および品種間差が大きかったことについては,台風時点に早生品種は登熟が進んで被害をある程度回避したのに対して中・晩生種は出穂期〜乳熟期の最も被害を受けやすい生育状態にあったことと,他方,早生品種は主として中山間の地形的に被害回避可能な地帯に作付けされているのに対して,中・晩生種は潮風をもっとも強く受け易い地帯に作付けされており,両者の相互作用によったものと推察された。
著者
前田 英俊 田崎 信幸 竹内 公博 小川 義雄 松場 貢
出版者
日本作物学会
雑誌
日本作物学会九州支部会報 (ISSN:02853507)
巻号頁・発行日
no.59, pp.9-12, 1992-12-21
被引用文献数
5

1.平成3年9月14日に台風17号,次いで27目に19号が長崎県に襲来し,水稲に大被害を及ぼした。とくに諌早地域を中心とする県失地帯に大被害を及ぼしたので,31地点の坪刈調査により,被害要因の生態的解析を行った。2.品種による差異 早生の日本晴は被害が最も少なく,早生の晩のヒノヒカリから強く影響を受けており,出穂期の遅い品種ほど被害が大きかった。出穂期から登熟期のごく初期に台風にあったものがとくに登熟歩合への影響が強く,登熟が進んでいたものは影響が少なかった。また,出穂期の遅い品種ほど粒厚の薄い方に分布が多くなった。3地形による差異 海岸近接地および平坦地で直接海からの暴風にあった地点での被害は著しいが,回りを山に囲まれ風をあまり受けなかった地点は影響が少なかった。4.海岸からの距離による差異 海岸から離れるほど収量,品質ともに向上した。とくに海岸から2.5?以内に作付されたものは品質低下が著しく,塩分濃度の高い潮風がこの範囲までは強く吹いたことを示した。