- 著者
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小幡 良次
小幡 由佳子
白石 義人
- 出版者
- 一般社団法人 日本ペインクリニック学会
- 雑誌
- 日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
- 巻号頁・発行日
- vol.23, no.2, pp.97-101, 2016 (Released:2016-06-30)
- 参考文献数
- 10
症例は51歳の男性.特発性脳脊髄液減少症の保存的治療中に,意識障害が出現した.頭部MRIで硬膜下血腫が認められ,脳槽シンチグラフィーで腰部からの脳脊髄液漏出が確認できた.意識障害が進行したため,全身麻酔で穿頭血腫ドレナージを行った直後に,自己血16 mlと造影剤4 mlの混合液(合計20 ml)で腰部硬膜外自家血パッチを行った.手術後,意識障害は改善し,頭痛もなくなった.手術直後の頭部CTでくも膜下出血に類似したhigh-density areaが認められたが,post-operative day(POD)1には消失した.POD 8まで保存的治療を継続し,POD 20に退院し,以後再発は起こっていない.進行する意識障害のある硬膜下血腫合併の特発性脳脊髄液減少症に対して,硬膜下血腫除去術先行の硬膜外自家血パッチの同時手術は有効であった.しかし,全身麻酔下の自家血パッチは危険を伴うため,覚醒後に症状と広がりを確認しながら行う必要があった.