著者
小幡 良次 小幡 由佳子 白石 義人
出版者
一般社団法人 日本ペインクリニック学会
雑誌
日本ペインクリニック学会誌 (ISSN:13404903)
巻号頁・発行日
vol.23, no.2, pp.97-101, 2016 (Released:2016-06-30)
参考文献数
10

症例は51歳の男性.特発性脳脊髄液減少症の保存的治療中に,意識障害が出現した.頭部MRIで硬膜下血腫が認められ,脳槽シンチグラフィーで腰部からの脳脊髄液漏出が確認できた.意識障害が進行したため,全身麻酔で穿頭血腫ドレナージを行った直後に,自己血16 mlと造影剤4 mlの混合液(合計20 ml)で腰部硬膜外自家血パッチを行った.手術後,意識障害は改善し,頭痛もなくなった.手術直後の頭部CTでくも膜下出血に類似したhigh-density areaが認められたが,post-operative day(POD)1には消失した.POD 8まで保存的治療を継続し,POD 20に退院し,以後再発は起こっていない.進行する意識障害のある硬膜下血腫合併の特発性脳脊髄液減少症に対して,硬膜下血腫除去術先行の硬膜外自家血パッチの同時手術は有効であった.しかし,全身麻酔下の自家血パッチは危険を伴うため,覚醒後に症状と広がりを確認しながら行う必要があった.
著者
白石 義人
出版者
日本臨床麻酔学会
雑誌
日本臨床麻酔学会誌 (ISSN:02854945)
巻号頁・発行日
vol.38, no.3, pp.341-345, 2018-05-15 (Released:2018-06-23)

日本における薬物依存や乱用による事件が社会的問題となっている中で,われわれ医療者(麻酔科医)は患者を薬物依存に陥らせないようにすべきことはもちろんである.しかし自分自身が薬物依存に陥ってしまうことは,医療者の社会的信用を失墜し,医療倫理にも反する.残念ながら日本においては処罰(刑事罰,行政処分)という概念が先行して,薬物依存に対する予防・啓発活動,治療システムの構築,さらには社会復帰という各段階を支援し実施する体制は現状では極めて貧弱であると言わざるを得ない.日本における薬物依存の現状や医療者の薬物依存に対する日本麻酔科学会のこれまでの取り組みを概説する.今後とも医療者の薬物依存の存在と危険性を医療者の共通認識とするために継続的に情報を発信していきたい.
著者
酒井 澄美子 白石 義人 横山 順一郎 五十嵐 寛 木村 健
出版者
The Japanese Society of Intensive Care Medicine
雑誌
日本集中治療医学会雑誌 (ISSN:13407988)
巻号頁・発行日
vol.6, no.1, pp.53-57, 1999-01-01 (Released:2009-03-27)
参考文献数
6

緊急手術患者においてA1Bm血液型患者への不適合輸血を経験した。A1Bm型はB型抗原決定基数が非常に少ないBm型抗原と,A型抗原決定基数が非常に多いA1型抗原とからなるAB型の亜型であり,血液型検査では「おもて・うら」試験が不一致となる。本症例の緊急検査結果は「おもて」試験でA型であったが,「うら」試験のB血球に凝集が認められず,精査必要と報告された。患者は大量出血が続き,精査結果を待つ余裕もなく,大量のA型血液が輸血された。患者はショック状態が続いていたが,患者血液型がA1Bm型であるという精査結果が報告され,直ちに輸血血液をAB型新鮮凍結血漿,AB型濃厚血小板液,A型洗浄赤血球液に変更し,集中治療を続けた結果,重篤な臓器不全を合併することなく回復した。Bm型抗原と抗B抗体との反応性が低いことが不適合輸血による重篤な後遺症を回避できたおもな要因であると思われる。