著者
小平 久正
出版者
北里大学
雑誌
奨励研究(A)
巻号頁・発行日
1995

H. pyloriは、菌体側の定着因子と宿主側の受容体との結合性を介して胃粘膜ゲル層および表層粘膜に定着している。その受容体の多くは糖蛋白や糖脂質であることが知られている。本研究の目的は薬物により影響を受けた胃粘液糖鎖構造の変化が、H. pyloriの結合に影響を及ぼすか否かを検討することである。1.胃粘液糖鎖構造をレクチン組織化学およびELISA法を用いて胃粘液ゲル層、表層粘膜、深層粘膜に分類した。H. pylori受容体糖鎖構造の一部として取られるシアル酸は粘液ゲル層において、フコースは粘液ゲル層および胃粘膜表層において観察された(日本薬学会第116年会発表予定、投稿準備中)。2.胃粘膜直接刺激性のあるアスピリンあるいはカプサイシン経口投与で胃粘液分泌性が増加し、表層粘膜におけるシアロムチンの増加と胃粘液ゲル層におけるシアル酸の増加を認めた(アメリカ消化器病学会発表予定)。3.上記薬物処置により得られた胃粘液を精製し、H. pylori分画抗原を固相化したELISAプレート(HM-CAP)に対する結合性を検討した。アスピリン処置により得られた粘液ゲル層ムチンは正常マウスに比べてHM-CAPに対する高い結合性が認められた。以上のことから、H. pylori受容体に関与する糖鎖は胃粘液ゲル層および粘膜表層において認められ、これら糖鎖との結合性にアスピリンが影響する可能性が示唆された。