著者
小張 祐介 林田 健太郎
出版者
メジカルビュー社
巻号頁・発行日
pp.1165-1171, 2020-12-09

経カテーテル大動脈弁留置術(transcatheter aortic valve implantation:TAVI)は,これまで複数の無作為化比較試験において,短期から中期において外科的大動脈弁置換術(surgical aortic valve replacement:SAVR)と比較して良好な臨床成績を収めており,外科手術リスクにかかわらず,より低リスク患者,またより若年者への適応が拡大している。2020年3月に発表された,日本循環器学会「2020年改訂版弁膜症治療のガイドライン」でも,gatekeeperとしての外科手術リスクスコアは削除され,75歳以下はSAVR,80歳以上はTAVIを第一に検討することが明記された。一方で,これまで周術期リスクが高く外科的治療を受けられずにいた高齢患者に対するTAVIの適応については,これまでにも多くの議論がなされているが,明確な基準はない。先述のガイドラインでも,超高齢者,寝たきりや認知症患者への安易な介入は慎むべきとされており,弁膜症チームにおける慎重な検討が必要である。わが国は世界中を見渡しても平均寿命が高い水準にあり,今後,より高齢な患者に対するTAVIが広がっていくと考えられる。本稿では,高齢者の適応についてこれまでに明らかになっていること,また今後の展望について詳述する。