著者
小方 浩明
出版者
首都大学東京
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2018-04-01

"Models for circular data from time series spectra"のプロジェクトでは、方向統計学で広く知られている密度関数の多くが、時系列解析におけるスペクトル密度関数によって表現できることを指摘し、また、ARMA(p,q)型のスペクトル密度関数から方向統計学におけるかなり一般的な密度関数を提言することを行った。論文は学術雑誌に投稿され、査読者から指摘された実データ解析を行った。具体的には、アメリカの風向データに対して、提案した複数のモデルを当てはめ、AICの意味でベストなものを示した。また、当初はARMA(p,q)の次数がp+q<=2の場合のスペクトル密度関数から方向統計学の密度関数を提案していたが、留数定理を用いることでp+q>2の場合でも正規化定数を計算でき、方向統計学の密度関数を与えることができた。"Frechet-Hoeffding copula bounds for circular data"のプロジェクトでは、二変量周期確率ベクトルのコピュラを考え、その上限(M_a)と下限(W_a)の形を与えているが、当初は「周期確率ベクトルのサポートが2π周期の意味でnondecreasing (nonincreasing) setになっているときにM_a(W_a)を達成する」という流れで証明を書いており、これでは確率変数が連続型の場合のみしか扱えていなかった。そこを、「周期確率ベクトルにおけるコピュラの同値類」という概念を作り、「circularにおけるコピュラ上限(下限)の同値類はM_a(W_a)で与えられる」という流れにすることによって、連続型、離散型を問わず議論することに成功した。