著者
小曽根 雄一 網野 由美子 杉崎 俊夫
出版者
一般社団法人 日本接着学会
雑誌
日本接着学会誌 (ISSN:09164812)
巻号頁・発行日
vol.48, no.12, pp.436-439, 2012-12-01 (Released:2014-06-30)
参考文献数
21
被引用文献数
1

感圧接着剤(粘着剤)でガラス等の無機物に貼付するような用途では,高温高湿の環境下においても長期間高い粘着性,耐久性,耐湿性が求められ,シランカップリング剤が添加される場合がある。例えば,建物や車両などの開口部におけるガラスへの機能性フィルム貼付用粘着剤,光学機能性部材を液晶セルのガラス基板に接着するための粘着剤などである。そのため,シランカップリング剤の分散状態を解析し,粘着特性との関係を明らかにする事により,効果的なシランカップリング剤の利用による,界面接着強度の制御が可能になると考える。しかし,これまでに粘着剤中のシランカップリング剤分散状態を具体的に数値化した例はほとんどない。本報では,アクリル酸エステル共重合体中のシランカップリング剤添加量を変化させた時の分散状態解析及びガラスに対する粘着力を評価し,シランカップリング剤分散状態との関係を考察した。ブチルアクリレート,2-ヒドロキシエチルメタアクリレートからなるアクリル酸エステル共重合体に架橋剤及びシランカップリング剤を添加し,酢酸エチルにて希釈後,ポリエステルフィルム上に塗布することで粘着シートを作製した。シランカツプリング剤の分散状態をX線光電子分光法(XPS)及びC60イオンスパッタリングを用いて解析した結果,シランカップリング剤は粘着シート表面に偏在し,添加量の増加に伴い表面存在量も増加する傾向を示した。また,粘着シート、表面のシランカップリング剤量が,粘着力制御に重要であることが示された。