著者
小木曽 早苗
出版者
日本福祉大学社会福祉学部
雑誌
日本福祉大学社会福祉論集 = Journal social Welfare, Nihon Fukushi University (ISSN:1345174X)
巻号頁・発行日
no.140, pp.89-110, 2019-03-31

全国的に人口減少や高齢化が進行し地域移行支援対象が拡大するなかで,権利擁護支援ニーズは高まりを見せているが,地方の小規模自治体では人員・人材不足や財政面の負担も大きく,継続的に対応する上での困難さが生じている状況がある. 本稿では,小規模自治体の権利擁護支援の形成プロセスにはどのような条件整備が必要であるか,筆者ら大学研究チーム1が関わる高知県中山間地域の小規模自治体と実施主体である社会福祉協議会(以下,社協)の共同作業を例に,3 つの展開プロセスを通じて考察した. 結果,①先駆的な自治体調査のプロセスを経た小規模自治体型の検討,②継続的なスーパービジョンによる関係者の連携強化と支援力の向上,③各種調査研究等による根拠あるミッションの共有,④地域福祉を基盤とした権利擁護支援の方向性,が条件として確認された.また,⑤安定的な財源確保の必要性,⑥外部からの長期的な支援の重要性,も見えている. 中土佐町では,第2 期地域福祉計画の柱立てとしても権利擁護支援の充実を置く判断をし,より目指す方向性が明確になった.権利擁護支援を重要軸とした体制構築は,支え合いに留まらない地域共生社会の実現においても大きな役割を担おうとしている.