- 著者
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小杉 雅俊
- 出版者
- 北海道大学大学院経済学研究科
- 雑誌
- 經濟學研究 (ISSN:04516265)
- 巻号頁・発行日
- vol.61, no.4, pp.59-73, 2012-03-08
本稿の目的は, イギリス企業における品質原価計算を検討することにより, その実態を明らかにすることである。第II章では, 品質原価計算が成立したアメリカの動向を整理し, 品質コスト概念を中心に品質原価計算の適応領域が拡大したことを確認している。第III章ではイギリスにおける個別企業の事例を対象とした分析である。事例として調味料製造企業, ヘルスケア関連企業を扱っている。コスト低減という目標において, 現場に対しては時間の削減という具体的な指示を行う企業, 機会原価概念を導入する企業があり, 品質コストの全体像を把握しようとする傾向があった。最後にイギリス企業における品質原価計算の特徴を検討し, 近年の実態を明らかにしている。 アメリカの品質原価計算は未来志向となっており, 全社レベルでの実施を重視する。その一例である機会原価概念の導入はイギリス企業でも実践されていた。機会原価を誘発する失敗活動の認識は, 改めて経営の全体的観点からの判断を要請する。品質原価計算を管理会計システムとして運用するか, 既存のシステムの中で運用するかは別として, 品質の重要性が低くなることは考えられず重要な技法であることには違いない。