著者
小松 仁美
雑誌
総合福祉研究 = Social welfare research bulletin (ISSN:18818315)
巻号頁・発行日
vol.23, pp.143-155, 2019-03-31

メキシコ市ではホームレスが貧困問題の一つとして喫緊の課題となっている.2011-2012年に全体の半数以上を占めた18-40歳の若中年層ホームレスに着目すると,彼・彼女らは1990年代に大量のストリートチルドレンとなった層と重なる.新たにストリートチルドレンとなる子どもが大幅に減少した一方で,路上において成人年齢に達し,その後も路上生活を継続する元ストリートチルドレンのホームレスが相当数に達している.彼・彼女らは,支援の不十分さと成人年齢を境にした打ち切り,麻薬の蔓延,成人後の限定的な支援など複合的要因により路上に居続けることとなった.また,彼・彼女らは初等教育開始前後にストリートチルドレンとなったために低学歴であり,そのために社会復帰がより困難となっている.本稿では,ストリートチルドレンから若中年層ホームレスになった層への支援においては,長期の定住・就学支援が重要となる点を示唆した.