著者
和久井 健司 岡部 慎也 小松 憲治 丹羽 克昌 藤垣 順三 Kenji Wakui Okabe Shinya Komatsu Kenji Niwa Katsumasa Fujigaki Junzo
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.261-266,

RAPD および ISSR 法により,シクラメン(Cyclamen)属内における種および個体間の遺伝的変異を評価し,類縁関係を推定した。シクラメン属野生種(C. persicum, C. coum, C.purpurascens, C. africanum, C. hederifolium, C. graecum およびC. rohlfsianum)および園芸品種(C. persicum cv.カールソ,ネオゴールデンガール)の計 7種 24個体について,17種のランダムプライマーおよび 11種の ISSR プライマーを用いた多型解析の結果,453 のバンドが検出され,全てのバンドで多型がみられた。そのうち,55 のバンドは種特異的であった。多型データに基づく AMOVA 解析の結果,遺伝的変異は種内と比べて種間で大きく,種の分化が明確に示された。同データによる数量化理論III類より 7種は 4つのグループに分けられた。そこで,野生種のみのデータを用いた UPGMA 法によるクラスター解析を行った結果,7種は 3つのクラスターを構成し,シクラメン属内の亜属を Psilanthum, Gryophoebe, Cyclamen および Eucosme とする,既報の分類仮説と一致した。本研究は,RAPD および ISSR マーカーを用いてシクラメン属内の類縁関係を示した最初の報告であり,これらマーカーによるシクラメン種の識別の可能性を示唆した。
著者
和久井 健司 北村 真理 松田 蘭 小松 憲治 藤垣 順三
出版者
東京農業大学
雑誌
東京農業大学農学集報 (ISSN:03759202)
巻号頁・発行日
vol.57, no.4, pp.293-299, 2013-03 (Released:2013-12-26)

RAPD法により,日本圏内に自生のHemerocallis属内における種,変種および個体間の遺伝的変異を評価し,類縁関係を推定した。20種のランダムプライマーを用いたPCRで,248のバンドが検出され,そのうちの240(96.7%)のバンドで多型がみられた。多型データに基づくAMOVAの結果,遺伝的変異は種間に比べて変種間で小さく,同データによる主座標分析および平均距離法によるクラスター解析により,各変種について既知の分類を反映した配置が得られた。さらに,これらの分析によって,H.dumortieri var. esculenta内における低地タイプの個体群が遺伝的に区別可能であると共に,H.aurantiaca(ハマカンゾウ)およびH.fulva(ノカンゾウ,ヤブカンゾウ)の両種が遺伝的に近縁であることが示唆された。本研究は,DNAマーカーを用いて日本在来のHemerocallis属内における遺伝変異および類縁関係を示した最初の報告である。