著者
林 宏一 田島 均 元村 淳子 小松 豊 藤江 秀彰 首藤 康文 青山 博昭
出版者
日本毒性学会
雑誌
日本毒性学会学術年会
巻号頁・発行日
vol.42, pp.P-229, 2015

近年,農薬等の化学物質による複合暴露影響に対する社会的関心が高まっているものの,複合毒性を評価するためには多数の動物と労力を要する。そこで,使用動物数の削減と簡便なスクリーニング法の確立を目指して,安全性薬理試験で用いられている摘出回腸テストによる複合毒性影響試験法を検討した。まず,一般的に使用されるモルモットと神経毒性影響の背景値が多いラットを使用して,代表的なコリンエステラーゼ活性(ChE)阻害剤を中心にして単剤に対する反応を確認した。<br>動物はSD系雄ラットおよびハートレイ系雄モルモット8~12週齢を使用した。動物を吸入麻酔下で放血殺し,回腸を1動物から2~3試料切り出した。試料は35℃,95%O<sub>2</sub>+5%CO<sub>2</sub>混合ガスを通気したタイロード液を満たしたマグヌス管にいれ,等張性トランスデューサに設置した。30分間以上静置した後,試料の反応を確認して実験に供した。検査は有機リン剤のパラチオン,その代謝物のパラオキソン,メタミドホス,カーバメイト剤のMPMC,ネオスチグミンを2×10<sup>-6</sup>~2 mg/mL濃度で,硫酸ニコチンは5×10<sup>-6</sup>~0.5 mg/mLの濃度で,それぞれ10倍段階系列で作成し,低濃度から累積暴露した。観察時間は各用量15分とした。パラチオンではラット,モルモットともに明瞭な反応は認められなかった。パラオキソン,メタミドホス,MPMC,ネオスチグミンではラット,モルモットともに用量相関性の収縮反応が認められ,その反応に種差は認められなかった。硫酸ニコチン暴露群では,ラットでは明瞭な収縮反応が検出できず,高濃度暴露に従って弛緩する傾向が認められた。モルモットでは一過性の明瞭な収縮反応の後,速やかに弛緩する反応が観察された。