- 著者
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一志 静香
小林 けさい
橋爪 貴子
百瀬 里美
下條 美芳
- 出版者
- 信州大学医学部附属病院看護部
- 雑誌
- 信州大学医学部附属病院看護研究集録 (ISSN:13433059)
- 巻号頁・発行日
- vol.35, no.1, pp.171-174, 2006-03
児童精神科における入院治療では「治療の場」であると同時に「成長発達の場」としての機能も求められる。強い不安と緊張を抱え、慣れない環境で孤独感を感じ自分からは話すことが出来なかった1期は、身体管理を行う一方で、不安な気持ちを汲み、そばに居て一緒に過ごす時間を毎日作る事で「安心の提供」と「児との関係作り」が進んだと考える。2期は院内学級に登校し、他患児との交流が増えたが不安やストレスが高まると消灯時に腹部症状で表出した。又同年代の患児への興味・関心と共感。理想化から自己否定感,内的葛藤の増大を起こし不安定となり消灯後にリストカットした。毎晩、付き添いマッサージやタッチングをしながら話しをし、「ありのままの自分」で良いことを伝え支持的な関わりを続けた。しだいに「気持ちの言語化」が増えてきた。夕方から寝るまでの時間帯の関わりは重要な位置をしめ、看護力は治療能力のかなりの部分を占めていると言うことを強く感じた。3期では、他患児の存在で刺激された陰性感情や、抑えられていた依存欲求の表出、退院等の現実に直面した不安からのリストカットも見られた。繰り返し行動化に介入し、気持ちをありのままに受け止める関わりで、患児自身が自分を振り返ることもできてきた。結果「食行動と感情の連動」が減り両親へも少しずつ気持ちが伝えられるようになったと考える。全期を通し親元を離れ不安を抱えて入院してくる子供が、安心して自分の問題に取り組むことができる場をいかに提供するか、心理的成長ができる時間・人間関係を保証できるかが重要である。