著者
小林 卓矢 石原 諭
出版者
一般社団法人 日本科学教育学会
雑誌
日本科学教育学会研究会研究報告
巻号頁・発行日
vol.33, no.7, pp.25-28, 2019

<p>「物理は公式を覚えてそれに値を代入する科目」といった誤解が,特に物理を苦手とする生徒たちの間に蔓延しているように思われる.その状況を少しでも改善させるため,世界的に評価の高い教材である「ファインマン物理学」のⅠ章9節にある「逐次計算手法」を高校物理に導入することを提案したい.この手法を導入するメリットは,先に述べた物理を苦手とする生徒への物理の概念形成を促すという効果だけではなく,発展的なことを求める生徒にも効果が期待される.それは逐次計算手法が,公式が通用しない,理想的でない状況における物理現象の説明(加速度が位置や速度により変化する,一般に微分方程式を用いなければ運動解析ができないもののグラフ化)に役立つからである.逐次計算手法の教育的効果について,高校3年生に補習授業「単振動の様子を逐次計算で追う」を実施し,補習前後のアンケート調査(MPEXメリーランド大学物理期待観調査)を分析することで,その有効性を確かめた.</p>