著者
河本 佳奈江 井越 敬司 門岡 幸男 小林 弘昌 安田 伸
出版者
東海大学農学部
雑誌
東海大学紀要. 農学部 (ISSN:18831516)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.31-38, 2012

体内における酸化バランスの破綻は動脈硬化症やガンなどの生活習慣病の発症リスクを高めることが知られており,特定の食品摂取によるこれら疾病予防効果が期待されている。乳発酵食品であるチーズの健康維持および増進に有益な情報を提供するべく,本研究ではヤギ乳チーズが2種類の活性酸素消去作用を介した抗酸化作用を有するか調べることとした。まず15種類の市販のヤギ乳チーズから70%エタノール可溶性画分を調製し,遊離脂肪酸,トリグリセリド,総フェノールならびにペプチド含量の測定を行った。次に,2種類の活性酸素である過酸化水素(H2O2)およびスーパーオキシドアニオン(O2-)ラジカルに対するヤギ乳チーズ抽出物の消去作用を分光学的に調べた。15種類の各チーズ抽出物のなかでKavliチーズが最も高いH2O2消去作用を示し,Saint-Maure Soignonチーズが最も高いO2-ラジカル消去活性を示した。このとき,チーズのH2O2消去作用と遊離脂肪酸含量,トリグリセリド含量またはフェノール含量との間には有意な正の相関性が認められ,O2-ラジカル消去作用と遊離脂肪酸含量またはペプチド含量との間にもまた正の相関性が認められた。以上より、ヤギ乳チーズはこれらの代表的な2つの活性酸素種に対して抗酸化能を有しており,その強さは含有する遊離脂肪酸,トリグリセリド,総フェノールまたはペプチド量によって部分的にではあるものの関連づけられうることが示唆された。