著者
柳井 徳磨 野田 亜矢子 村田 浩一 安田 伸二 浜 夏樹 酒井 洋樹 柵木 利昭
出版者
日本野生動物医学会
雑誌
Japanese journal of zoo and wildlife medicine (ISSN:13426133)
巻号頁・発行日
vol.7, no.2, pp.153-156, 2002-09

14歳の雄カナダオオヤマネコの左頚部皮膚に発生した扁平上皮癌の病理学的特徴を調べた。剖検では,左頚部皮膚は潰瘍を伴い著しく肥厚し,皮下には形状が不規則な黄白色腫瘤が左耳下腺部および左下顎に認められた。組織学的には,腫瘤は分化型扁平上皮癌の浸潤増殖からなり,高度な線維化を伴っていた。この癌は広範囲で深い浸潤を示し気管周囲にまで到達していた。免疫組織学的には,腫瘍細胞の細胞質ケラチンおよびサイトケラチンAE1およびAE3に対する陽性反応が認められた。本腫瘍の形態学的特徴はネコのそれとよく類似していた。
著者
小野 政輝 安田 伸
出版者
東海大学
雑誌
基盤研究(C)
巻号頁・発行日
2016-04-01

樹脂配糖体は、糖部が部分的にアシル化されたオキシ脂肪酸のオリゴ配糖体で、ヒルガオ科植物に特徴的に含有される。本科植物の、サツマイモ、ハマヒルガオ、ハリアサガオ、ブラジルヤラッパ、ルコウアサガオ、マメアサガオおよびコヒルガオの7種を材料に、樹脂配糖体の研究を行った。その結果、36種の樹脂配糖体を得た。これらのうち、15種の新規樹脂配糖体を含む22種の構造を各種機器分析データならびに化学反応を用いて決定した。また、構造決定した化合物のうち、1種に抗単純ヘルペス1型活性、3種に白血病細胞株(HL-60)に対する細胞傷害活性を見出した。
著者
米田 一成 竹下 晃音 緒方 美月 安田 伸 井越 敬司 木下 英樹
出版者
日本酪農科学会
雑誌
ミルクサイエンス (ISSN:13430289)
巻号頁・発行日
vol.70, no.2, pp.53-62, 2021 (Released:2021-09-08)
参考文献数
41

解糖系酵素であるグリセルアルデヒド-3-リン酸脱水素酵素(GAPDH)は代表的なムーンライティングプロテインとして知られている。我々は以前の研究で,GAPDHが腸ムチンやその糖鎖末端に発現しているABO式血液型抗原のA型およびB型抗原と結合することを明らかにしているが,糖鎖のどの部位に結合しているのかは不明なままであった。そこで,すでに明らかにしているLactiplantibacillus plantarum subsp. plantarum JCM 1149T由来リコンビナントGAPDH(rGAPDH)の結晶構造情報に基づいてA型血液型抗原結合部位の探索を行ったところ,サブユニット間の分子表面部分にリジン残基やアスパラギン酸残基がクラスターを形成しているキャビティー(空洞;357 Å2)があることを見出した。さらに,キャビティーの中心に位置する175番目のリジン残基(Lys175)がA型血液型抗原の結合に重要な役割を担うと予測した。そこで,DpnI法を用いて遺伝子工学的に部位特異変異導入を行い,Lys175を電荷を持たないアラニンに変異させたLys175Ala変異体であるgap(Lys175Ala)遺伝子を作製し,wild-typeと同様に発現と精製を行った。本酵素を用いて,A型血液型抗原との分子間相互作用をQuartz Crystal Microbalance (QCM);水晶振動子マイクロバランス法で測定した。その結果,wild-typeのΔFの平均値(-173 Hz)はLys175Ala変異体酵素のΔFの平均値(-103 Hz)の1.7倍高い値であることから,L. plantarum由来rGAPDHのLys175がA型血液型抗原の認識に重要な役割を担っていることを明らかにした。rGAPDHとA型血液型抗原の詳細な結合構造を解明するため,AutoDock Vinaを用いた分子ドッキングシミュレーションを行った結果,rGAPDHとA型血液型抗原との結合エネルギーは-6.3 kcal/molであった。三糖で構成されるA型血液型抗原との結合は,Gln312の主鎖のNHがN-アセチルガラクトサミン(GalNAc)と水素結合しており,Lys175の側鎖がガラクトース(Gal)と水素結合していた。また,Asn311の側鎖がGalと水素結合しており,Asp255の側鎖がフコース(Fuc)と水素結合していることを明らかにした。
著者
河本 佳奈江 井越 敬司 門岡 幸男 小林 弘昌 安田 伸
出版者
東海大学農学部
雑誌
東海大学紀要. 農学部 (ISSN:18831516)
巻号頁・発行日
vol.31, pp.31-38, 2012

体内における酸化バランスの破綻は動脈硬化症やガンなどの生活習慣病の発症リスクを高めることが知られており,特定の食品摂取によるこれら疾病予防効果が期待されている。乳発酵食品であるチーズの健康維持および増進に有益な情報を提供するべく,本研究ではヤギ乳チーズが2種類の活性酸素消去作用を介した抗酸化作用を有するか調べることとした。まず15種類の市販のヤギ乳チーズから70%エタノール可溶性画分を調製し,遊離脂肪酸,トリグリセリド,総フェノールならびにペプチド含量の測定を行った。次に,2種類の活性酸素である過酸化水素(H2O2)およびスーパーオキシドアニオン(O2-)ラジカルに対するヤギ乳チーズ抽出物の消去作用を分光学的に調べた。15種類の各チーズ抽出物のなかでKavliチーズが最も高いH2O2消去作用を示し,Saint-Maure Soignonチーズが最も高いO2-ラジカル消去活性を示した。このとき,チーズのH2O2消去作用と遊離脂肪酸含量,トリグリセリド含量またはフェノール含量との間には有意な正の相関性が認められ,O2-ラジカル消去作用と遊離脂肪酸含量またはペプチド含量との間にもまた正の相関性が認められた。以上より、ヤギ乳チーズはこれらの代表的な2つの活性酸素種に対して抗酸化能を有しており,その強さは含有する遊離脂肪酸,トリグリセリド,総フェノールまたはペプチド量によって部分的にではあるものの関連づけられうることが示唆された。